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タワーマンションの恋人
第4章 * シオン
「一人に絞ったりするの勿体無いし。だから、俺はここに通ったりしないけど、気を悪くしないでね?」
そう言う彼と視線が交わって何度か頷いた。
「うん、わかった。…あ、“シオン”って名前はは本名なの?」
話を変えようと思って、そう尋ねるとまた彼は軽い調子で答える。
「うん、本名。変な名前でしょ。…キラキラネームっつうの?」
「そんなことないよ?」
「由来とかも知らないし、すげー嫌いだった。この名前。」
たまに視線が交わるのに、すごく冷ややかな視線の解き方をする子だな、と思う。
ただ、そんな尖った気持ちやその表現の仕方、なんとなくわかるな、なんて。
「由来、知らないの?」
「うん。俺、この世界入って地元離れるまでほとんどばぁちゃんに育ててもらったから。」
「そう、なんだ。」
「かあさんは、離婚して男作ってあんまり帰ってこなかったんだよね。」
この子の核の部分はこれか、と納得する。
なにかと、傷ついて孤独を味わってきたんだろう。
「ムカツクでしょ」
「え?」
「周りの大人とか、わかったこと言う人とか。なんなら、自分以外の人間全員うざいって思うでしょ。」
「…なん、で?」
「わたしも、シオンくんくらいのとき、そんな風に思ってた時期あるなぁって。」
「お姉さん、エスパー?」
あのギラギラした鋭い視線が丸みを帯びた眼光に変わる。
「違うよ、ちょっとわたしたち似てるかな。って思っただけ。こういう事言うのもウザがられそうだけど。」