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タワーマンションの恋人
第24章 * sovereign remedy
美学の中で生きることが心の支えだった。
醜い人種に立ち入らない、僕は美しくありたいという願望だけで乗り越えてきた。
ただ、ある時転機が訪れた。
中学2年、初めて顔に傷がついた。
両親が恵んでくれた綺麗な顔、母に似てきめ細かく白い肌から血が滴ったのだと、頬が痛み、その傷に触れて気がついた。
トイレでぶちまけられた僕の荷物、その中にあったアルミ製の定規を振り回したやつがいてそれが頬を掠めたのが原因なのだが、気がついたら手が出ていた。
精錬で美しいという理由で小学生の頃から空手を習わせてもらっていた。
対人で使うつもりは無かったけど、お陰で虐めてきたやつをぐうの音も出ないほどにやりこめることは出来た。
人に手を挙げるという、美学に反することをしてハッとして顔を上げた。
だけど、窓ガラスに映った僕は例え顔から血が流れていても、床に転がる醜い人間とは比べ物にならないくらいに美しかった。
「ハハッ…本当に醜いなぁ」
床に転がるそれらには、触りたくない、見たくもない、反吐がでる。
そして、そもそも彼らと僕は違うものだったんだと思い知る。
彼らと同じことをしてしまった今でさえ、僕のみ美しくある現実にゾクゾクした。
「もう俺に関わるな、ドブス共が」
彼らの放つ言葉と俺の言う言葉、例え同じ暴言という類だとしても、違う言霊を持つ。
この容姿は、美しさは、武器になると知った。
僕が俺に変貌し、美学の中に強さと支配が追加された出来事だった。