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タワーマンションの恋人
第26章 * dog eat dog era
予定はトントン拍子に組まれて、わたしは奥原さんに連れられて都内の撮影所に向かった。
「シオン、主演ドラマが始まるのよ!」
運転しながら奥原さんが教えてくれた。
どんどんスターへの道を駆け上がるシオンには本当に感心させられるなぁ、と過ぎ行く景色を見ながら思う。
今日はそのドラマの撮影を見せてくれるらしい。
出演者を聞くと、どの人も聞いたことのある有名人ばかりで驚きつつ、ワクワクしていた。
部屋の外での表情を直に見れるというのは、この上なく嬉しいことなんだと実感する。
綺麗めのワンピースに主張の少ない軽めのアウターを羽織って髪は綺麗にまとめた。
「一応、会社の社員ってことで周りには紹介するわね。」と言われていたからなるべくオフィスカジュアルと呼ばれるものを意識してみた。
「華は本当に品があるわね?そういう格好がよく似合うわ。」
「えー?もう本当に奥原さんはうまいんだから。」そう言って笑えば「本当よ?品があってすごく利口そう。」と更に褒めてくれる。
「品があって利口だったら、きっと今頃普通の仕事してましたよ、きっと。」
うっかり思ったままのことを伝えると奥原さんはわたしをみて、優しく微笑んだ。
「私、華と出逢えてよかったわ。この仕事してくれて、ここに来てくれて、ありがとうね。」
「あ、いや、そんな…こちらこそありがとうございます。」
「普通の仕事じゃないかもしれないけど、やっぱりわたしは、選ばれた女の子にしか出来ない、特別な仕事だと思ってるの。引け目に、感じないでね。」
そう言った奥原さんの優しさを数時間後、わたしは身を持って知ることになる。