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タワーマンションの恋人
第26章 * dog eat dog era
スタジオと言われる場所に足を踏み入れると想像を遥かに超える人間の数に驚いた。
奥原さんの真似をしながらすれ違う人に挨拶をしていく。
「あれー?奥原さん、今日はずいぶん美人連れてきたね!」
「うちの社員なの。よろしくね。」
そう、さらりと紹介されると背筋が伸びる。
ちゃんとしなければ。会社の人間と紹介された以上恥ずかしい真似は出来ないと、自分を奮い立たせる。
「初めまして。宜しくお願いいたします。」
そう頭を下げるとスタッフらしき男の人はニコニコと会釈してくれた。
「華はどこに出しても恥ずかしくないわ。」
優しく笑う奥原さんを見て嬉しさと安堵が入り交じってわたしも頬がふわりとあがった。
端の方に二人で身を寄せ、慌ただしい喧騒の中、どの人が監督だとか、スポンサーだとかの説明を奥原さんから受けているとスタジオの雰囲気が一気に仕事モードに張り詰めた。
すると、よくテレビで観る女優さんが沢山の人に付き添われてスタジオに入ってきた。
あの人は確か、わたしと同い年くらいだったはずだとぼんやり考えてたけど、その圧倒的な美貌に息を呑んでいた。
陶器のように艶やかで真っ白な肌、手のひらに納まりそうな小さな顔、スラリと伸びた背筋、そのオーラを纏ったその人は同じ人間とは思えない、なんていう在り来りな感想しか出ないくらい美しかった。