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タワーマンションの恋人
第26章 * dog eat dog era
「華?どうしたの?泣いてる?」隣りに居た奥原さんが心配そうに声をかけてくれた。
「あ、違うんです、あの、」
必死で溢れる涙を止めながら言葉を紡ぐ。
「あの、その、シオンがかっこよくて…」そう言うと「なーに?そんなファンみたいなこと言って!」と笑ってくれた。
わたしなんかを可愛いと言って抱いてくれるシオンを愛おしく思いつつ、なんでわたしなんか…という複雑な気持ちが入り交じった。
あとどれだけ、彼はわたしを必死としてくれるのかな。シオンだけじゃない、ほかのみんなも、時間や歳を追うごとに離れていってしまうのでは。
そんな漠然とした不安が胸に広がった。
ずっとそばに、ずっと必要とされたい。
それが叶わないことは、わたし自身がよくわかっている。
だからこそ、大事にしたいと最近は思うのだ。
彼らと過ごす一瞬一瞬を。
いつ終わりが来ても、最後になっても後悔しないように。