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タワーマンションの恋人
第5章 * ハナ




わたしは、可哀想な子なんかじゃない。
寂しくなんかない。惨めじゃない。
わたしは自分で(特別)を手に入れる。


妹より(ちょっと特別)になりたかった。





中学生になると、よく先輩たちから声を掛けられた。
そのたびに周りの友達は羨望の眼差しでわたしを見たし、人気のある先輩と付き合うことになれば、その眼差しはもっと色んな人から向けられた。


「ハナすごいね!可愛いもんね!」
そうして褒められることや、格好いい先輩の隣を歩けること、それはどれもわたしを(ちょっとだけ特別)にして、優越感を与えてくれた。



その優越感による快感は、恋とか愛とかよりも強くて厄介だった。



誰の隣を歩けば特別になれるのか、周りから羨ましいと思ってもらえるのか、そんなことばかりを考えていた。
それは己の恋愛感情より、当時のわたしにとっては、なによりも重要なことだった。



「ハナ、好きだよ。」
みんなが羨む彼氏からそんな言葉を囁かれる自分は特別なんだ、そう思っていた。




「ハナ、首どうしたの?!…え!まさか!キスマーク?!」

15歳の時の初体験も、そのひとつだった。





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