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タワーマンションの恋人
第5章 * ハナ



クラブで勤務するようになってからは、順位で自分の価値を見出すことができたし、男の人との出会いと言えば、お客様が殆ど。


価値のあるお客様こそ居たけど、抱かれたいと思える男の人には出会うことは環境的にほぼ無くなった。
並んで歩いて目をひくような、羨まれるような男の人との出会いは皆無。




そんな中、今の仕事の話が舞いこんだ。



きっと、初めから心惹かれていたのかもしれない。
大森さんはわたしの心が欲してる言葉をピンポイントで投げかけてきた。
自尊心をくすぐり、特別な女だと祭りあげてくれた。



本当に馬鹿な女だ、わたしは。
いつだって、わたしは心に住み着いている妹と戦っている。


「わたしは、特別なの。ユウリがどうやったって来れない世界に居るんだから。」


甘やかされるだけ、甘やかされ、ぽっちゃりと肉付きの良くなった妹を思い浮かべる。



鏡の前に立てば、妹とは似ていない自分が居る。
顔こそ、親がくれたもの。

だけど、極力太陽にさらさず丁寧に守ってきた白い肌、無駄な肉が付かないように気を遣って守ってきたボディライン。
それらは欲しい物を手にするために、わたしが努力して守ってきたもの。

男たちが目を輝かせて欲しがるわたしを、自分で作り上げた。

妹には無いものを自分で作り上げてきた。努力してきた。



このマンションで初めてケイタに抱かれた時、
このうえない悦びに襲われて、身体が反応した。
綺麗な男の人との久しぶりの行為は、また過去の快感を、優越感を思い出してしまった。



日を置かず人が来れば焦燥感に襲われる暇もない。

ここに居ればきっと(ちょっとだけ特別)なんて言う価値観を忘れて暮らせる気がした。




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