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タワーマンションの恋人
第6章 * フミヤ
「フミ、なんか飲む?」
「ビール!ある?」
「あるよー。わたしも飲もっと。」
缶ビールを持って彼の隣に座り、ひとつ缶を手渡す。
「あざっす!」
そう言ってビールを開けてグイグイ飲んでいくフミヤ。
彼は学年的にはわたしの1つ下。
だけど、早生まれのわたしと年度初め生まれの彼、実際誕生日は1ヶ月しか変わらない、実質同い歳のようなもの。
「フミは本当美味しそうに飲むね」
「華みたいにちびちび飲んでたら温くなるからね。」
そう言って小さい子の頭を撫でるように、わたしの髪に触れる。
その目はすごく優しくて温かくて、どっちが歳上なのかわからなくなってしまう。
もう何度も彼はこの部屋にやって来ているのに、今だにわたしを抱こうとしない。
確かに1回目で抱かない人もそれなりに居るけれど、フミヤのようにいつまでも抱かないのは彼、ただ1人。
「あ、っつうか、華聞いて!」
「ん?なにー?」
嬉しそうに彼が仕事用の鞄を漁ると「ジャーン!」と何かを見せてきた。
「え?台本?!また仕事決まったの?!」
「そう。年末のSPドラマ!まぁ連ドラじゃないし、先輩のバーターなんだけどねっ。」
そう言いつつニコニコするフミヤを見ているとわたしまで嬉しくなる。
「そんなの関係ないよっ!…バーターだって数多くのバーター候補を勝ち抜いてフミになったんでしょ?立派なことだよ?」
「華ちゃん?それは一応フォローしてくれてんのかな?」
「え?うん!」
「ったく!バーターバーター連呼したら、全然フォローになってないっつうの!」
そう言ってヘッドロックされて転がるとふたりでけらけら笑い合う。
フミヤとの、そんな時間がすごく好きだった。
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