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タワーマンションの恋人
第6章 * フミヤ



「俺も、朝の一服は好きかな。静かで空気が澄んでる。」


「わかるよ。ここからの夜明けすごく綺麗だから、街が呼吸し始める音が聞こえる気がして。しばらくひとりでぼーっとしてたりする。」


生活リズムは一緒に過ごす子たちの予定で変わってくる。

体内時計がズレたまま、ひとりで朝を迎える時は、なんとなくこのバルコニーに出ることが多い。
一日の始まりをここから見つめられる気がして、また少し特別な気持ちになる。
澄んだ軽い空気を身体に感じるとさっぱりした気持ちで眠りにつけた。


「華の感じてる世界は、きっと綺麗だね」

「へ?」

「なんかで読んだ。なにかを美しいと思ったりするのは、その人の心が美しいからだ。って。」

「…フミらしくない。」

真面目な顔の彼にそう呟くと、彼は吹き出すように笑って「ごめんっ」なんて明るく謝ってきた。


灰皿で煙草を消すとふわりと後ろから抱きしめられる。


「身体、平気?」

「うん、平気。着替えとか、フミがしてくれたよね?ありがとう…。ベッドにも寝せてくれて。」

「ううん、こちらこそ。…華、あのさ、本当ごめん。」

振り向いて彼の顔を見ると辛そうな顔をしている。

「なんで?どうして謝るの?」

「だって、俺、昨日…。」

「フミはいつもわたしを大切にしてくれてる。その思いは伝わってるから。…だから、謝らないで?」

謝られると悲しくなる。

「あんなめちゃくちゃに抱きたくなかった。」

「…ううん、フミ?わたし嬉しかったよ?」

「なん、で?」

「初めて、フミが触れてくれたから。愛されてる気がした。」

そう伝えれば、抱き締める腕の力がもっと強くなって髪にキスが落ちてくる。




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