この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
タワーマンションの恋人
第6章 * フミヤ
前に回された手に自分の手を重ねれば、指先が絡み合う。
名前を呼ばれて振り向けば切なそうな顔をしたフミが居るから、そっと唇をついばんだ。
そこから何度も何度も唇を重ねて、舌を絡めた。
朝の澄んだ空気に包まれて交わすその行為は、なにか神聖なものの様な気さえして、身体が痛むのも忘れて空が明るくなるまで没頭した。
「いってらっしゃい、フミ。」
「いってきますっ!」
玄関を出る頃には、すっかりいつものフミヤに戻って、少年のように明るい笑顔で部屋を出て行った。
少しの寂しさと大きな疲れを抱えて部屋に戻る。
次の約束まで、時間はあまりない。
気持ちを切り替えて、記憶を心の箱にしまってメンタルをフラットな状態にする。
そうして次の子を迎え入れるのが礼儀だと思っている。
この仕事を始めて数ヶ月。
満たされる反面、のし掛かる負担には気がづかないフリをした。
色々考え始めれば、潰れてしまいそうになる気がした。
この仕事は、想像よりずっとずっと難しくて、辛かった。
.