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変質者の手毬唄・珍田一耕助シリーズ
第2章 「老婆と手毬唄」
盆踊りの会場に着いた珍田一と磯毛警部は、童心に帰って、屋台の焼きそばやら林檎飴やらを次から次へと買って食べていた
ひょっとするとそれらは、先程の気味の悪い出来事を忘れ去ろうとする、無意識のうちの防衛本能だったのかもしれなかった
「先生~、珍田一先生~!」
「おお、辰雄君…」
「お二人とも来てくれたんですね。どうです…結構賑やかで楽しいでしょう?」
「そうだね、もう食べ過ぎでお腹いっぱいだけどね…アハハ」
「ところで…お二人は蘭ちゃん見ませんでしたか?」
「ん…?蘭ちゃんというと…酒蔵の山岸さんのお宅のお嬢さんだったかな…?」
「そうです、そうです!…1時間くらい前から見当たらなくって…」
「…ということは…7時頃でしょうか…。先に家に帰ったって事は…?」
「う~ん、そうかなぁ…」
「もし、見かけたら辰雄君達が探していた事を伝えておくよ」
「はい、お願いします!!」
辰雄の姿が見えなくなると、思い出したように珍田一が口を開いた
「7時頃って言ったら…」
「あ、あの不気味な婆さんとすれ違った頃でしたかな…」
祭りの雰囲気で折角忘れかけていた不気味な老婆との遭遇を再び思い出すハメになってしまった…
「いかんいかん…折角楽しい盆踊りにきたんですから、楽しみましょう、珍田一さん」
「そ、そうですね」
不気味な出来事を忘れようと、二人は村の女たちの浴衣姿を見て楽しんだ
女の尻を肴に酒を酌み交わし、村の盆踊りをタップリ満喫した二人が宿に帰ったのは午後10時近かった