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変質者の手毬唄・珍田一耕助シリーズ
第7章 「恋と欲」
珍田一は嬉しそうに歯を見せて微笑むと、珍しく自分の事を一方的に話し始めた
いわゆる自己紹介だ
珍田一が自身の事を初対面の相手にここまで話す事は今迄に無い事だった
自分の生い立ちや幼少期の性格について、戦争に行ったこと、そして探偵稼業の事…
好きな食べ物や好きな土地、好きな活動写真や好きな女優…
珍田一耕助がどんな男であるかについて、ありとあらゆる話を聞かせた
凛も、素性のわからない初対面の宿泊客の話を嫌な顔一つせず黙って聞いていた
珍田一は自分の事を粗方話し終えると、先程までとは打って変わってゆっくりとした口調で、凛に質問したのである
「凛さんは百日紅がお好きなのですか?」
凛はこれまでと同じように小さく頷いた