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変質者の手毬唄・珍田一耕助シリーズ
第11章 変貌
近藤晴海殿
本日、講演終了後の混雑に紛れて貴方を連れ去らふとする者がいるとの情報を入手せり
犯人は講演会場に紛れていると思われる
講演が始まり次第、誰にも気付かれぬやう速やかに三本松まで来られたし
我々O県警で隠密に保護する
O県警本部長補佐 綾小路頼久
三本松と言うのは、村人なら誰でも知っている場所で小学校から北へ延びるあぜ道の途中にある場所だ
あぜ道は西側が林になっていて東側は水田が広がっている
その水田側に大きな松が三本並んで生えている場所があるのだ
晴海は三本松の下に付くと頬かむりをした男が立って手招きしていたという
男の側には藁の積まれた荷車があり、藁の中に隠れるよう指示されたらしい
男に言われるがまま、藁の中に潜り込んでいたところ、背後から鼻と口に布を当てられ意識を失ったらしいのだ
珍田一は男の容姿や話し方などについて見覚えや聞き覚えは無いか、聞いてみた
男の顔を覆っていた頬かむりの下の顔は不自然なほど浅黒くて、目だけが白く光っていた事と、見た目と釣り合わない少し高めの声色だった…という事くらいしか覚えていないという事である
勿論、晴海の衣類や手荷物も不明のままだから肝心の便箋も見当たらなかった
山岸蘭の時と同様、意識が戻ると既に全裸で身体の自由を奪われていたという事である…