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裸の傑作
第8章 ブルーになる日
しの子は、初めて薫の部屋を訪れた。


龍次郎のアトリエから、一駅分くらい離れた場所。


歩けば大した距離ではないが、薫はしの子の体調を慮ってタクシーに乗った。


部屋に入ると、しの子は薫のベッドに寝かされた。


「ここですこし休んで。何かあったら俺に言ってね」


薫はしの子の額をそっと撫でた。


その甘い仕草と言葉に、しの子は再び泣いてしまった。


「大丈夫?震えているね。寒いの?」


涙でむせぶしの子を見て、薫が言った。


「ううん、寒くない」


「何か悲しいことでもあったの」


薫はしの子の顔を覗き込む。


「話、聞こうか」


「いいの、大丈夫」


「大丈夫じゃないでしょ。しの子さんが悲しいと、俺も悲しいから」


薫は少し怒ったような声をあげた。


「いいの、薫君に迷惑かけたくないから」


しの子は嗚咽を漏らしながら言う。


彼女の言葉に、薫はもしや、と気がついた。
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