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しゃぼん玉色した彼
第2章 単純な興味
「大丈夫、ですか?」
その人は顔を腕で庇って蹲っている。
土で汚れた衣服。
さらりと揺れる黒い髪。
覗く肌からは殴られた時に出来た傷から垂れている赤い血。
「け、ケガしているじゃない!」
慌てて自分のカバンからハンカチを取り出すと、傷口に近付けた。
だけど、それは寸前で払われる。
「……触るな」
はらりと私の手から落ちたハンカチ。
思っているよりも低い声だった。
どかした腕から覗く彼の双眸。
鋭く私を射抜くように見ている。
透き通った茶色い瞳。
その眼に映る私。
「……いっ」
起き上がろうとした彼は、殴られた部分が痛むのか顔を歪めた。
「くっそ」
奥歯を噛みしめた彼は壁で自分を支えながら立ち上がる。
体を引きずりながら一歩足を踏み出す彼が痛々しい。
「あの、大丈夫ですか」
思わず、そう声をかけるが彼は私を一瞥すると無視して歩き出した。
だけどその足取りは重い。