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第1章 新居
「...稜、りょーーう」

心地よい眠りの中、体が大きく揺すられて目が覚める。

「うーん?」

「起きて。朝だよ」

「え、嘘。何時!?」

慌てて飛び起きて、時間を確認すると、いつも起きる時間を1時間もオーバーしている。

「あはは。やっと起きたね」

笑ってそう言う羚汰は、もうYシャツを着てスラックスも履いている。
恐らくネクタイとスーツを羽織るだけだ。

「ごめん、お弁当!」

羚汰の横をすり抜けて慌てて台所に向かうと、カウンターの上にはいつものお弁当袋が2つ置いてある。
常備野菜と、1品をすぐ詰めれるように用意してはいたけど。

「テキトウに詰めた。朝ご飯もほぼ出来てるよ」

テーブルの上には、湯気の立つオムレツと、トースト、冷蔵庫に常備してあるサラダが置いてある。

昨夜の事があったとはいえ、寝坊し過ぎた。

「早く用意して?その間にラテ入れるからー」

壁にかかっている時計を今一度確認して、落ち込んでいる時間はナイと思い直す。

「ごめんねっ」

大急ぎで着替えて、洗面所で顔を洗って〜化粧までを済ませテーブルに着く。

羚汰はもう座っていて、食べずに待ってくれていたようだ。

カフェラテのいい匂いが部屋に漂っている。

「「いただきます」」

一息ついて、まずはカフェラテをひと口。

バタバタと用意をして、喉がカラカラだ。
羚汰特製のカフェラテが、体に染み渡る。

「あー。美味しい」

「そ。よかった」

パンを頬張りながら嬉しそうに笑う羚汰は、昨日の疲れなど微塵も感じられない。
逆に、お肌がツヤツヤになって、イキイキとしてさえ見える。
朝からお弁当詰めて、朝ごはん作って。
しかも、さっきは気づかなかったが、窓際に洗濯物まで干してある。

それに比べ、一時間も寝坊した自分が恥ずかしい。

毎日夜遅くまで仕事のある羚汰に比べ、稜は夕方には家に帰る。
その分、しっかり家事をしようと心がけているのに。

「寝坊しちゃって、ごめんね。目覚まし、セットしてたハズなのになぁ」

「目覚まし鳴った時、俺も起こしたんだけど。稜、爆睡してたからね」

全く鳴ったのに気づかなかった。
スヌーズ機能まで付けてるのに。

「ま、昨日は俺がムチャさせちゃったし?疲れてんのかなーって」
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