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第1章 新居
にやにやと楽しそうに笑う羚汰に、顔が自然と赤くなってしまう。

「...ムチャしたの、羚汰も一緒なのに」

睡眠時間だって一緒の筈だ。
とちかというと、...というか、明らかに。
結局主導権を握っていた羚汰のほうが、体力を使っているハズ。
 
「んー?俺?」

お腹は減っていたのか、瞬く間にテーブルの上の朝ごはんが減っている。
稜も止まりそうになる手を、なんとか動かして口に運ぶ。

「俺は、稜とセックスしたほーが、リラックスしてぐっすり眠れるからね」

あっけらかんと言ってのける羚汰に、オムレツを吹き出しそうになってしまう。

ただ2人で並んで眠る時は、相当我慢してる。
体は確かに仕事で疲れて眠る事が出来るが、イマイチ熟睡出来ない。

笑いながらだが、そう言う羚汰の目の奥は真剣な気がする。

「うっそー!」

「ホントホント」

いつの間にか食べ終わった羚汰が、テーブルに肘を付け、稜のほうを覗き込んでいる。

「俺としては、また毎日シたいんだけど。稜が疲れるかなーって」

顔の横に垂れた髪を掬って、稜の耳にかける。

指が触れた耳がゾクゾクして、一瞬体が強ばる。

毎日を求められるのは嫌じゃない。
だけど、新しい職場やこっちの生活に慣れてなくて、体力に自信が無い。

「稜だって、いつもより爆睡してたでしょ。お肌つやつやだよ」

髪から頬に移動した指が、ぷにぷにと肌をつまむように触っている。

確かに、目覚ましが鳴ったのに全く気づかないほど爆睡はしたけど。

「俺とセックスするの嫌?」

殊更悲しそうな顔と声をして羚汰がうなだれ沈黙が広がる。

芝居と分かっていても、その手を取ってしまう。

「そんなワケないでしょ!」

「だよね!じゃ、決まり」

そう言うと、手を引き寄せ素早く稜の首元にキスを落として立ち上がり、食器を流しに運び出した。

稜に反論するスキが全く与えられない。

「ちょっと!...もー!」

残っていたカフェラテを飲みきって、立ち上がる。

食器ぐらいは、洗いたい。
羚汰からスポンジを奪うようにして、食器洗いに取り掛かる。

くすくす笑って羚汰が後ろから抱きついてきた。

「洗いにくい〜」

「今日も早く帰るからね。いっぱいシようね」

耳元で甘い声で囁かれて、カップを落としそうになる。
返事出来ずにいると、耳の縁をパクリと咥えられてしまった。
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