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第2章 ナミダのワケ
さっき見かけたばかりで、絶対部屋に居るはずなのに。

インターホンを押しても一向に出てこない。


スピーカーなどの付いてない、鳴るだけのインターホンの音が、ドア越しにこもって聞こえるぐらいだ。

聞こえてないワケないだろう。


...トイレにでも入ったか?


おそらく4度目となるボタンを押す動作を、止めてみる。


入居してから1ヶ月近く、時間を変えたり曜日を変えたりして、702には何度も訪ねてきた。

いつ来ても留守で、その度に紙袋を抱えてすごすご自分の部屋に戻った。

今日こそは渡したい。

かなり待ってから、もう一度インターホンを押した。


居留守を使うのを観念したのか、ドアの鍵をカチャっと開ける音がする。

「...はい」

ドアチェーンをかけたまま、わずかにドアが開いた。

顔を隠すようにしていて、全くもって視線が合わない。
聞こえてきた声はかなりダミ声で、なんだか変なカンジだ。

警戒しすぎじゃね??

「あ、すいません。隣に越してきた者なんですけどー」

まだ途中だと言うのに、ドアがバタンと閉まった。

え。何?なんか失礼な人だな。

と思ってると、ガチャガチャ音がしてから、702のドアが大きく開いた。

「ごめんなさい」

ああ、ドアチェーンを外す為に一旦閉めたのね。
別にチェーンしたままでも良かったんだけど。

ペコリと大袈裟なぐらいお辞儀をして、持ち上げた顔がありえないぐらい号泣した顔だった。

ぎょっとしながら、なんとか挨拶をする。

「隣の701に越してきた斎藤です。これ、つまらない物なんですけど、ご挨拶に...」

じーちゃんが用意してくれた引越しの挨拶用の洗濯セッケンは、ご丁寧にのし付だ。
本来なら紙袋から出して手渡しするんだけど、702の人があまりにも号泣してて、そのまま渡してしまった。

インターホンを鳴らしても出てこなかったのは、泣いていたから??

目も鼻も真っ赤だし、頬には涙で濡れたアトがあるし、手に握りしめているハンカチはぐっしょりしている。

どんだけ泣いてんだろ。

「あ、どうも。...ご丁寧に」

またぺこりとお辞儀をして、差し出した紙袋を受け取った。

顔をあげた拍子になのか、両目からぼろぼろぼろっと涙が零れててゆく。

「あ、ごめん、なさい」

頬を伝って落ちてゆく涙をハンカチで拭う。
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