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第2章 ナミダのワケ
元々、女性がきゃいきゃいと騒ぐのは好きじゃない。
過去の忌まわしい記憶が蘇る。

表面的にはにこやかに仲良く見えても、腹の中では何を考えてるか分からない。

互いの服や髪型なんかを褒めながら、自分のほうが優れているんだと相手を見下しているんだ。

自分を満足させる為にあんな『女子会』など、くだらない
集まりを繰り返す。

クールな彼女は、そんな“女子”とは別な気がしたのに。

胸のもやもやは、きっとそのせい。



ランチのピークに差し掛かって、そんなもやもやに気を取られている間はなくなり、次々とピザを作る。

それから2度、彼女達のテーブルの近くにピザを運ぶことはあった。

2度目に近づいた時、それまでと雰囲気が違う事にきづく。

「それは言い過ぎ。なんでそんなに喧嘩腰なの」
「うそ!えー、だって...」
「だってじゃないよ。それじゃ、冷静になれてないのは同じじゃない」

話の内容はよく分からないが、背の高いのが何か言い過ぎて怒られている。

キーキーと怒るのではなく、静かに淡々と説明する丸っこい女性に、背の高い方がそれまでの勢いが削がれて急にしゅんとなっている。

702の彼女は...。
この位置からはその表情は見えず、声も聞こえない。

テーブルの上のピザやパスタは食べ終えて空になっているのが見えた。
それを引くという名聞で、そのテーブルに寄ってみる。

「千夏の、その素直で真っ直ぐな所は長所よ。だけど、短所でもあると思う」

それまで黙っていた702の彼女がそう話し始めた。
横顔が凛としていて、さっきとは雰囲気がまた違って見える。

会釈して、テーブルの空いた皿を引いてゆく。
自分でもよくこの場に割って入れるなと思ったが、もう引き返せなくなっていた。

「言い過ぎたって思ったなら、今からでもそう言うべきよ」
「今から?」
「そうね。黙ってて分かれってのが、無理なのよ。言わなきゃ伝わらないわよ」
「千夏が冷静に、ちゃんと言えば伝わるよ」
「うーん。でもさぁ、あれから1週間は経ってて...」
「だから、関係ないって」

内容は分からないが、真剣な話だというのは伝わってきた。
この3人は、一般的なガールズトークだけじゃないらしい。

続きが凄く気になるが、また会釈してテーブルを離れる。

最後まで3人は話に夢中で、スタッフのことなど気づかなかったようだった。
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