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第2章 ナミダのワケ
「リョウも、俺と同じ趣味とは知りませんでした~」

誰かがかけている賑やかな音楽で、大貴の言葉はあまり聞き取れない。

年上好きの大貴は随分前から、この店のリサに狙いをつけているらしい。
クールな外見と甘い言葉のギャップに落ちない女は居ないとウワサされているらしい大貴も、リサには毎回カナリ冷たくあしらわれている。

リサにとって1回り以上も下な大貴は対象外らしいのだが、大貴は意に介さない。
つれなくされるのが、逆に燃えるとかいってアプローチを欠かさない。

羚汰の酒を注いでくれているリサに、今も熱い視線を送っている。

そうは言っても、リサ一筋というワケでもなく。
そこらじゅう、範囲は広くつまみ食いはしているようだ。
もちろん対象は、おねー様たち。
きゃいきゃいやかましいと、若い世代には触手は向かないらしい。

「...そんなんじゃねーし」

来たばかりのショットを飲み干し、ライムを咥える。

酒を置いて去ってゆくリサを追いかける大貴の目の奥が、キラリと光っている。

どこがいいのだろう。
確かに咥えタバコが似合う綺麗な人だけど、感情ってものが全く見えない。

いつの間にかふうっと、今日会った702の彼女の顔が浮かぶ。

「な。オンナが泣くのって、どんな時?」

「はぁ?イキナリ何ですかそれ」

苦笑いしながら、大貴はタバコ片手にウイスキーを手の中で転がしている。
どう言っていいやらと黙っていると、呆れたようにではあるが少し考えてくれているようだ。

「そんなのしょっちゅうでしょ。泣けるテレビ見たとか、彼氏と喧嘩したとか、仕事でミスしたとか...。些細なことでスグ泣きますよ」

そうなんだよな。

オンナの涙はよく目にする。

あの非情なねーちゃんですら、「涙は武器になる」とか豪語していた気がする。

でも、演技であんな号泣するだろうか。
涙をぼろほろ流し、鼻水が垂れるぐらい。

しかも、あの時は部屋に1人だったはずだ。

いや。部屋に彼氏がいたのだろうか。

必殺仕事人な、彼氏がー。


だめだ。今日はテキーラでも酔えそうにない。

「リサさん、日本酒下さい」

「えーーー!リョウ、日本酒いっちゃうのー?それ、やばいって〜」

ビール片手に抱きついてきたのは、ドルチェ担当の瑞希だ。
他のテーブルから出来上がってやって来た。

「瑞希。重い」
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