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第1章 新居
痩せたことによってか、髪を黒く短くしたからか。
少年っぽさががくっと減って、大人の色香が醸し出ている。

喉ぼどけがごくんと動いて、味噌汁を飲んでいる。

たわいもないその動作に、吸いこまれるように見入ってしまう。

「そんなに見つめられてたら、食べにくいんだけど?」

「あ、ごめん」

羚汰はムッとしたというより、少し困ったようにではあるが笑っている。

こっそり伺っていたつもりが、いつの間にかガン見していた。

視線を外し、正面の自分の晩御飯に向き直る。
羚汰を見つめてて、あまりご飯が進んでない。

稜も同じように味噌汁に手を伸ばして、沢山入った野菜をがばっと口に入れる。

すると今度は、逆に羚汰の視線を感じる。

「...え、何?」
 
「んー?」

笑いながら、羚汰も正面に向き直ってゆく。
なんとも意味深だ。

「何?えー、ちょっと気になる、言ってよ」

「あはは。それはチョット言えないなぁ〜」

羚汰に比べて稜は、少し太った自覚がある。

慣れない都会での生活に、新しい職場。
ごく最近まで引越しの荷物も片付いてなくて、羚汰のいない日は、お惣菜ものや丼的なご飯でパパッと済ませていた。
それに加えて、片付けが一段落したら、ゴホウビとして甘いものやスナック菓子を食べたり。
そんなこんなで、約半年前の結婚式の頃に比べて、目に見えて確実に体重は増えた。

2日ほど前に、体重計に久しぶりに乗ったら、なんと3キロも増えていたのだ。
前測ったのは、前のマンションの時で、約3ヶ月前ー。
ということは、1ヶ月1キロペースだ。
かなりヤバイ。

「やだ。そんなに太った?やっぱり?」

太った自覚があるから、今日の晩御飯も和食にしたぐらいだ。
量も羚汰よりは減らしている。

「...違うよ」

いやいやいや。今一瞬、間がありましたけど?

ギロりと睨むと、羚汰がまた笑った。

結婚して、旦那が痩せて、奥さんが太る。
そんな新婚夫婦、どこにいるんだろう。

普通は、幸せ太りで旦那さんが太るのが、古からの習わしなのに!!

「そんな顔しないで。ほら、食べて」

「うー」

こんなに太って。キュウリとワカメの酢の物を食べる手も躊躇ってしまう。

「後でしっかり運動すればいんだからさ」

こっちでは勿論、スポーツジムには行っていない。
それもよくないのかもしれない。
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