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第3章 報酬と楽穴
「サキじゃん。え、誰かと待ち合わせ?」

指定された大学からカナリ離れた場所のカフェで、初めて会うコと待ち合わせの約束をしていた。
人目につかない場所がいいと、およそ若い学生なんかが来そうにないカフェというより、“喫茶店”だ。

そこに、ある程度顔見知りのサキが、1人で隅っこに座っていたのだ。

クラブでちょいちょい顔を合わせる事があって。
確か偶然にも同じ大学だったハズだ。
学年も学部も違うから、たまーに構内で見かけることはあっても特に会話をしたことはナイけど。

サキは、室内なのに大きなサングラスをかけて、キャップも被っている。
だけど、いつも漂っている香水の匂いはするし、何より弄っているスマホのカバーが、ゴテゴテギラギラと飾り立てたヤツですげー目立つ。

そういうサキは、人の顔を見上げた途端、「チッ」と舌打ちをした。
どうやらご機嫌ナナメらしい。

「悪いね。じゃ、俺行くわ」

挨拶してそのテーブルから離れようと、空いたテーブルを探す。

さほど広くない店内、どこにしようか見渡していると、サキがスマホを弄りながら不本意そうに声を掛けてくる。

「座れば?」

「あ、いい。俺待ち合わせしててさー」

その時、手に持ったスマホが鳴って、メールの着信を告げる。

『だから、私だから』

案の定、待ち合わせ相手からで。
遅れるとか、今着くとかといった内容かと思っていたので、画面に出た意味が分からない。

「だから、座ればって言ってるんだし」

相変わらずキレ気味のサキが、何やらメールの画面をこちらに向けてくる。

その画面には、先ほどと同じ『だから、私だから』という文字が浮かんでいる。

「...あ!」

やっと意味が分かった。
急いで向かいの椅子に滑り込む。

「だって、俺、キミエってコと待ち合わせだと思ってて」

というのも、アドレスにそうあったのだ。
偽名だったのか。

「サキは、名字。崎本」

って、え?

「ってゆーか、え?なんだけど」

サキは、ウチの大学では結構可愛いと評判のコだ。
格好同様、遊び方も派手で、よく違う男を連れている。

そのサキが、俺に頼むってことはー。

軽くパニックの羚汰に、おばちゃん店員がお水を差し出す。

「あ、アイスコーヒーで」

夏も終わりかけだが、まだまだ暑く冷たい飲み物がいい。
駅からかなり歩いたので喉がカラカラだ。
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