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第5章 Matrimonio
これで2人は夫婦となった。

結婚式は明後日だし。
指輪はその時に、ということになっているし。
書類を出しただけでは、実感がまだ沸いてこない。

なんだか現実とは思えず、夢の中にでもいるみたいだ。

稜たちの次に待っている人がいて。
2人でお礼を言ってそそくさと窓口を離れた。


羚汰に手を引っ張られて建物を出ると、ちょうど駅行のバスが来ていて慌てて飛び乗った。

またしても、ぎゅうぎゅうなぐらいの満員で。

極度の緊張が溶けぼーっとする稜は、羚汰に抱きしめられるようにして乗ってることにも気づかなかった。

気づいたのは、手続き後はまた大学に戻ると言っていた羚汰が同じバスに乗って駅に向かっていることだ。

大学と駅はほぼ反対方向にある。

「羚汰、大学はいいの?」

「うん。ちょっと行きたいとこあってさ。そこ行ったら、戻る」

そう言う羚汰が、稜を連れて向かった先は、とあるカフェだった。

なんだか見たことがある外観に、記憶の糸を手繰り寄せる。

「...ここって」

にまっと笑う羚汰が、カフェのドアを開けてくれる。

やっぱり。見覚えのあるカフェだ。

ほぼ満席に埋まっていた為、すみっこのテーブル席に案内される。

「懐かしいね!」

少しメニューが変わっていたが、カフェラテの可愛い写真が数多く並んでいる。

「今日は絶対ここ来たくて」

メニューの上の手に、羚汰の指が絡まる。

「ちょうど一年前でしょ。覚えてる?」

忘れるわけない。

ちょうど1年前ー。
ラコルテでクリスマス料理教室があって。
このカフェで、お茶をして。
遊園地にイルミネーションを見に行って。
キスをして、気持ちを確かめ合って。
心も体も強く結ばれた。

羚汰は、1年となる今日、入籍したかったらしい。
それは前から言ってたことだ。

だけど、またこのカフェに来るとは思わなかった。

正面に座った羚汰がのぞき込むようにして見つめてきて、あの時の事や入籍したという事実が、それまでぼーっとしていた稜に、一気に襲いかかってくる。

店内が暖かいのもあって、頭に血が駆け上がる。

「じゃ、カフェラテ頼もう!」

一旦立ち上がって、慌ててコートを脱ぐ。

羚汰がくすくす笑いながら、同じく立ち上がりコートを脱ぐのを手伝ってくれる。
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