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第23章 ハプニングバー
「乾杯」

3回目の乾杯。
チヨは渡されたワインを口に含む。
そんなに飲んではいないつもりなのに。
非日常的な空間のせいか、頬が熱い。

「いいの?彼ほっておいて」

タカダは相変わらずチヨを飛び越して女性と話していたけれど、ふと気がついたように斜めにいる男性に目をやる。
目の前に現れてから、一言も声を発していない。

「ふふ、いいの。これが私たちのお楽しみなんだから。彼とってもヤキモチ焼きなの。こうして私が彼の知らない人と話しているだけで、今晩は激しい夜になるのよ?」

「はは、これが前戯?」

「そう。お互い家庭があるくせにね」

いろんなカップルがいるんだなぁ。
チヨはぼんやりとしながら、また周りを観察する。

一番奥のテーブルでは、女王様に奉仕する男性。
気がつくと隣のテーブルの三人はそれを間近で見ようとわざとらしく身を乗り出している。

カウンター席のカップルと、目が合った。
彼らは特に何もするつもりはないみたいだけれど。
キョロキョロしていると何度も目が合う。
もしかしたら、私たちが何かするのを待ってる?

「あなただって、かわいい彼女ほったらかしでいいの?」

「ん?そうだね。ごめんね」

タカダは女性の言葉にチヨの頭を撫でる。
なんだか子ども扱いされてるみたい。
つい反抗しようとすると、反対側から女性の手がチヨの腕を撫でた。

「すごい肌綺麗ね、すべすべ。色も白いし。羨ましい」

「あ、いえ、そんなことないです」

「そんなことあるわよ。若いっていいわねー」

チヨよりは年上だろうけど、この人の肌も十分綺麗なのに。

「はは、でも普段隠してるところのほうがもっと白いよね?ちょっと前より日焼けしちゃってない?」

「え?」

「えー、どこ?見てみたい」

女性はわかっていながらも嘯く。

「あの、え?」

会話についていけずに2人の顔を交互に見るチヨに、タカダは耳元で囁いた。

「ね、ちょっと脱いでみようか?」

固まるチヨの背中に手を伸ばすと、ゆっくりとファスナーを下ろし始めた。
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