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女神の目覚め
第1章 女神の目覚め prolog
___有沙さんは帰り支度をした格好でボーっと立てっている。


『有沙さん!
…………タイムカード押しました?』
切れる息を抑えて言うと、
『…………あ。

やだ、まだだった(笑)』
有沙さんの細い指が紙切れを持つ。





『行きましょう』
俺は有沙さんのジャケットを軽く引っ張った。


『桜井くん………………、』

思い詰めたような有沙さんの声。



階段を降り、
社用門を出ると俺はさり気なく左側に移動した。

___有沙先輩がバッグから帽子を取り出し、
被る。





街中にあるウチの会社。

通りは会社帰りのサラリーマンやOL、
これから繰り出す学生たちで賑わっている。


あちこちから楽しげな笑い声が聞こえる。





『宅飲みしません?

有沙先輩、
こないだ………すごくよく眠ってたから。
落ち着くかなと』

俺はおずおずと提案する。





『え、宅飲み…………
通くんちだよね?
えっと、………………うん』


迷いがあるのが分かる。


当然だと思う。



けど、俺は初めて有沙先輩と話した時から、
気付いていた。


鎖骨の下・ブラウスの襟元にある青紫の痣。





秋の風が髪を浮かせるというのに、
有沙先輩は外に出ると必ず帽子を被る。



そんなに綺麗な髪なのに。



思わず抱き締めたい衝動に駆られたけど拳を握って我慢した。


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