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夢…獏の喰わぬ夢
第1章 春
今朝の自分勝手な夢を見透かされたようで、
一瞬ドキッとしたが、冷静に
「たまに、あるかな。」
と答えた。
「大学なんて行きっこないし、このまま就職させるにも変わった娘が、
大学に行きたいって言ったもんだから、親は喜んでくれたわ。
離れて独り暮らしするのも抵抗なかったみたい。」
「独り暮らしなんだ。僕もだよ。大学に入りたい理由は違うかな。
君みたいに目的なんてない。
ただこのまま就職して社会人になるのが嫌だっただけで、なりたい将来の夢なんてない。」
「将来の夢ね。
同じ夢って遣うのにずい分違うわね。」
「そうだね。
夢に、君ほど詳しくないけど、フロイトなんて、夢の分析に生涯を費やして、仕事にしたんだ。
夢と夢を追い求めたんだね。」
意味の違う夢を架けてちょっと気取ったつもりだったが、彼女には、大して面白くなかったようだ。
「フロイトも、分析なんてしないで、夢そのものをもっと楽しめば良かったのに…」
彼女の満足のいく会話ができず、更に、今朝、余韻に任せて現実に処理してしまった僕は、居心地が悪くなって時計を見た。
(そろそろ戻らないと講義に間に合わないな)