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夢…獏の喰わぬ夢
第8章 変化
「私、海ってあまり行ったことないけど」
彼女が話し出す。
「音や色でイメージが湧いて、そこにいる気分になっているでしょう?」
「そうだね。祖母の家の海を思い出して、潮の香りまでしてきそうだ。」
僕は答える。
「現実に五感が受けとめたものは、イメージとして記憶にとどまり、
夢の世界ではそれを自由に出し入れできるわ。
夢はね、記憶の引き出しを開ける鍵なの」
僕は夢で自由を感じたことは少ない。欲しいものはわかっているのに違う引き出しばかり開けてしまう。
中身に驚いて、慌ててしまおうにも閉じられないか、
違う引き出しに手をかけてまた、失敗する。
「自由になるコツを教えて欲しいよ。」
素直に訴えた。
「右左、男女、過去未来、人って常識というしがらみに囚われやすいわね。」
答えのようでよく理解できない言葉に何も返せなかった。
「でもね、現実の中で一緒に体感すること、共感するのは大事ね。」
「そうなんだ。」
「だから一緒にいたいの。」