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夢…獏の喰わぬ夢
第9章 色
ふと、バベルの塔と蜘蛛の糸のミックスした夢を思い出した。
『私にとっては…』と言うように、夢を理解しているのは、彼女だけしかいないのではないか?
そこに、現実が虚空であり、夢が真実であるという事実にたどり着いたのは、彼女しかいなくて、それであの混沌とした世界があるのではないか?
そう思ったが言葉にはしなかった。
そして考え込んでしまい僕は彼女を見ていなかった。
だから、彼女が僕の思考を読み取って、妖しく美しく歪んだ笑みを浮かべていたのに気づかなかったのだ。
そこからしばらく無言で観賞した。
空虚な現実をもう一度平面の色に戻した絵を、再度光を通して見ることに意味があるのだろうか?
そんな考えで、美しい、これはわからない、と、作者の意図を汲み取ろうとしていた。
「あ、これ、僕の田舎だ。」
「え?」
「この黄色と青と少しのピンクは、僕の町の春だ。」
「そう、素敵ね。行ってみてみたいわ。」
その作品には題名がなく、実際には何を描いたものかわからないが、
僕には、『田舎の春』という題名しかなく、形を成さない色の編成でしかない抽象画は、
僕の町を描いた風景画にしか見えなかったのだ。
『私にとっては…』と言うように、夢を理解しているのは、彼女だけしかいないのではないか?
そこに、現実が虚空であり、夢が真実であるという事実にたどり着いたのは、彼女しかいなくて、それであの混沌とした世界があるのではないか?
そう思ったが言葉にはしなかった。
そして考え込んでしまい僕は彼女を見ていなかった。
だから、彼女が僕の思考を読み取って、妖しく美しく歪んだ笑みを浮かべていたのに気づかなかったのだ。
そこからしばらく無言で観賞した。
空虚な現実をもう一度平面の色に戻した絵を、再度光を通して見ることに意味があるのだろうか?
そんな考えで、美しい、これはわからない、と、作者の意図を汲み取ろうとしていた。
「あ、これ、僕の田舎だ。」
「え?」
「この黄色と青と少しのピンクは、僕の町の春だ。」
「そう、素敵ね。行ってみてみたいわ。」
その作品には題名がなく、実際には何を描いたものかわからないが、
僕には、『田舎の春』という題名しかなく、形を成さない色の編成でしかない抽象画は、
僕の町を描いた風景画にしか見えなかったのだ。