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夢…獏の喰わぬ夢
第3章 春雨
毛布を一気に剥ぎ取った。
…が、そこに獲物の存在はなく、つい今し方までいた香りだけが残っていた。
「ダメって言ったのに」
彼女の声が風にのって届いた。
夢だ、夢なら許してもらおう。
ハッと気づいた。
目覚めた瞬間に、僕の腕と胸の温もりも冷めているのを知った。
ベッドから飛び降りて彼女を探した。
あまりに狭い部屋は、瞬時に彼女が現実にも居なくなっている事実を叩きつけてきた。
「何故?約束を守らなかったからか?」
答えの主がいないのに僕は声に出して言った。
僕はベッドのサイドテーブルに小さな紙切れを見つけた。
それを恐る恐る手に取った。
綺麗な字だった。
「彼女の字なんて見たことなかったっけ」
また声にした。
内容が『夢の約束を守らなかかったこと』だった時のために、
自分が寂しくならないように……