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夢…獏の喰わぬ夢
第3章 春雨
『黙って帰るのは失礼だけど、あまりにぐっすり眠っているから…。
傘の代わりにシャツを借ります。
明日、ランチの時に返すね。』
「良かった…怒って帰った訳じゃないんだ」
自分に言い聞かせるように呟いた。
でも、もっと一緒にいてくれても良かったのに…
安心すると次々に思いが浮かんでくる。
そして、獲物を逃した獣の夢は、否応なしに体に反応を起こしていた。
その収まり場所を見失ったというのに、空に向かっている。
そして、彼女と自分が混ざり合った形跡を残していた。
体は彼女の存在を覚えているのに、果たしてどこからが夢だったのだろうか。
すべてが独りよがりな妄想だったような気もしてきた。
不安をシャワーで洗い流すことにした。
そして、彼女のキスの感触は消さない、そそり立ったものは刺激させないように、
夢と現実の余韻が混ざって吐き出してしまわないように、注意深く洗い流した。
最初に彼女を夢で抱いた時のように、余韻に任せて処理してしまうのは、彼女をも汚すことだ。