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夢…獏の喰わぬ夢
第4章 五月晴れ
しかし、彼女の[絶対]は、珍しく外れた。
気配を消したはずの彼女の存在は僕の中で大きなものに成長している。
僕は、彼女の夢の中の自分にさえ嫉妬した。
奴は、どんなふうに奔放なんだろう。彼女は僕に不満があるのか?
奴は僕の知らない彼女を知っているのだろう。
それはどんな彼女なのか?
最初に夢にみた彼女か?
静かに互いを確かめ合った彼女か?
僕を駆り立てた彼女か?
彼女の理想とする僕に満たされた彼女は、きっと素晴らしいのだろう。
僕はそこまでの彼女を見いだすことが出来るのだろうか。
終わりのない迷路に踏み入れた僕が、
初めて彼女の騎士として働く時が訪れた。
「そこの君、君だ、五月晴れ顔負けのシャツを着た君。次のページから朗読を続けたまえ!」
用心すべき講師だった。
いつもではないが、機嫌が悪い時にたまに学生に朗読させる。
いつものことなら皆覚悟するのに、不意に指されるから面食らう。
上手くできないと講壇に立たされることもある。
皆が、奥さんと上手くいってないからだ。いや、元学生の不倫相手と上手くいっていないんだと噂している。