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夢…獏の喰わぬ夢
第4章 五月晴れ

講師も居眠りの罰として読ませたことを忘れているようだった。

皆が聞きほれていた。意味が解らなくても心地よかった。

そして、僕は昨日の美しい彼女の音色を思い出した。僕だけが知る、美しい調べ…。


「もうよろしい。」

皆が我に返った。

講師は

「また、読んでもらうことにしよう。」

負けを知り、また居眠りしないように釘をさしたつもりらしいが、もう彼女が指されることはないだろう。


この男は、とにかくプライドが高いのだ。
また、皆を彼女の虜にさせるチャンスを与えるわけがない。

僕も独占欲から、彼女が知られることはないほうがいいと願った。

彼女は、

「助かった。サンキュー」

と唇を動かした。

Thank you…と、すぼめた唇にキスしたくなった。


そしてあろうことか大胆にも、すぐさま夢の中に戻っていった。

思った通り、講師は彼女に目もくれず、進み過ぎたページを戻し注釈を入れた。

自分への注目を取り戻す為に時間になるまで講師は話し続けた。


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