この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
夢…獏の喰わぬ夢
第4章 五月晴れ
講師も居眠りの罰として読ませたことを忘れているようだった。
皆が聞きほれていた。意味が解らなくても心地よかった。
そして、僕は昨日の美しい彼女の音色を思い出した。僕だけが知る、美しい調べ…。
「もうよろしい。」
皆が我に返った。
講師は
「また、読んでもらうことにしよう。」
負けを知り、また居眠りしないように釘をさしたつもりらしいが、もう彼女が指されることはないだろう。
この男は、とにかくプライドが高いのだ。
また、皆を彼女の虜にさせるチャンスを与えるわけがない。
僕も独占欲から、彼女が知られることはないほうがいいと願った。
彼女は、
「助かった。サンキュー」
と唇を動かした。
Thank you…と、すぼめた唇にキスしたくなった。
そしてあろうことか大胆にも、すぐさま夢の中に戻っていった。
思った通り、講師は彼女に目もくれず、進み過ぎたページを戻し注釈を入れた。
自分への注目を取り戻す為に時間になるまで講師は話し続けた。