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夢…獏の喰わぬ夢
第4章 五月晴れ
鐘がなり、彼女は起き上がる。
僕は騎士の役目を果たしたご褒美に彼女とのランチタイムを過ごす事が許される。
しかし、今までの僕達ではなかった。
廊下に出るまでに皆の視線が絡みつくように彼女を見た。
さっきの講師をも黙らせた彼女の存在感に、皆が振り向いた。
彼女に向かってガッツポーズをする男もいた。
彼女の容姿は特に目立たないものだと最初に話したが、誰が見ても並みより上だろう。
つんとした美人ではないし、媚びるような可愛さはない。
しかし、それは目立たずに大学生活の目的を充実させる為に彼女自身が作り上げた地味さから受ける印象であった。
小柄で小さな顔に、大きな瞳、整った鼻、肉感的な唇、それらがコンパクトにまとまっている。
もし彼女がその気で、愛くるしい瞳とそそられる唇を持って、
「隣に座っていいかしら?」
と歩き回っていたら、もっと早いうちに渦中の人になっていただろう。
僕は鈍感な自分に後悔した。
僕に声を掛けてきた時に気付いたらよかった。
そうしたら、僕は、彼女を人目に晒さずに、クローゼットの奥に隠しておいたのに。