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初戀 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第3章 恋のためいき
綾香との待ち合わせは帝大の赤門の近くにある定食屋だ。
「綾香さん、何が食べたい?どこに行きたい?どこでも連れて行ってあげるよ」
綾香を初めての食事に誘った時に当麻は興奮気味に尋ねた。
銀座のマキシムでも、帝国ホテルでも、どこへでも連れて行ってあげるつもりだった。
…それなのに…
「…望己さんがいつも行くお店に行きたい」
「え?」
「大学のお友達と行くような気楽なお店…」
「そんなところでいいの?」
拍子抜けする当麻。
「うん。そういうお店がいいの」
綾香はそう言って美しい笑顔で笑った。

…本当にこんな店で良かったのかなあ…。
当麻は不安げに定食屋の煤けた看板を振り返る。
…と、その時…
小走りで駆けてくる綾香の姿が見えた。

白いブラウスに花模様のスカート…。
髪を可愛らしく結い、ピンクのふわふわしたリボンをつけている…。
化粧は控えめで、薄く口紅を引いただけだが、通り過ぎる人が皆、思わず振り返るほどの美しさだ。

…綾香さん…綺麗だ…!
当麻は思わず見惚れてしまう。
「ごめんね、お待たせして…」
「いや…全然…。綾香さん、綺麗だね…」
当麻はじっと綾香を見つめる。
綾香は頬を染めて俯く。
「やだ…何言ってるの」
「本当だよ。…綺麗だし、可愛い…すごく」
…舞台の綾香は大人っぽくて艶めいて綺麗だけど、素の綾香は少女らしい清潔感に溢れ、とても愛らしい。
大きな瞳はキラキラ輝き、白磁のような頬を紅潮させ、唇は薔薇の蕾のようだ。
「入ろう…」
…これ以上、綾香さんを往来に立たせて置いたら、変な虫が付いてしまう!
当麻は綾香の華奢な手を大事そうに握りしめ、店のドアを開けた。








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