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初戀 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第3章 恋のためいき
「…贅沢だわ…」
はっと顔を上げると、綾香が少し硬い表情をして当麻を見つめている。
「…私には生まれた時から父親はいないし、大好きな母さんも二年前に亡くなって、一人ぼっち…。喧嘩することも出来ないのよ」
「…綾香さん…」
綾香は表情を和らげて、当麻に話しかける。
「お父さんが厳しい人なら、尚更お母さんに優しくしてあげないと」
「…綾香さん。…綾香さんは優しいね。ありがとう」
思わず綾香の手を握る。
綾香はびくりと手を震わせたが、手を引っ込めようとはしなかった。
そして、恥ずかしそうに俯く。
初々しい綾香が本当に愛おしい。
…二人が見つめ合っていると…
「はいはい!アツアツのお二人さんにはアツアツのオムライスだよ〜!お待たせ!」
店のおばさんが陽気に、湯気が立ち上る出来立てのオムライスを二つ、テーブルにどかんと置く。
二人は慌てて手を引っ込めて、目を合わせてくすりと笑う。
「…食べようか」
「うん!」
綾香はオムライスを綺麗な所作で口に運ぶ。
…不思議なのは綾香の品の良さである。
とても浅草長屋育ちの貧しい出と思えないほど、所作や立ち居振る舞いに品格がある。
…お母さんがきちんと躾をしたのかな。
当麻は綾香の姿かたちだけでなく、内面から滲み出る品位や、凛とした矜持にいつも驚かされる。
…本当に、綾香さんは会えば会うほど好きになってしまう人だ…。

「美味しい!すごく美味しい!」
綾香が嬉しそうに笑った。
「…良かった…。綾香さんが気に入ってくれて」
もっともっと綾香を笑わせたい。
もっともっと綾香を喜ばせたい。

「…綾香さん…大好きだよ…」
綾香の大きな目が更に見開かれる。
「望己さん…」
…その時である。
当麻の後ろに突然、どやどやと数人の大学生が現れた。
「よっ!当麻!色男!」
「お前!とうとうこの麗しのDIVAを口説き落としたのか‼︎おめでとう!当麻!」
「くそお〜!俺だってDIVAを狙っていたのに!この野郎〜!」
当麻の悪友達が当麻を羽交い締めにして、騒ぎ立てる。
「ちょっ…よせよ、お前達!」
ジタバタする当麻を尻目に、悪友達は綾香に握手を求め、明るく話しかける。

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