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初戀 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第3章 恋のためいき
「綾香さん!当麻をよろしくお願いします。ハンサムで秀才で非の打ち所がない奴ですが、ボンボンゆえにどこか抜けている所があって…」
「失礼だろ!」
「でも!綾香さんを思う気持ちは本物ですから!こいつ、綾香さんに出逢ってからず〜っと綾香さんのことしか話さないんですよ。綾香さんが綾香さんが…て…ほとんど病気みたいに…」
「おい!やめろってば!」
当麻が悪友の口を塞ぐようにする。
綾香はくすくす笑いだす。
その笑顔は、子供のように無垢で、飾り気のない透き通るような本当に美しいものだった。
悪友達や当麻は、その美しさに見惚れてしまい、うっとりと口を揃えて呟いた。
「…綺麗だ…」

当麻に叩き出された悪友達は、外のガラス越しに万歳三唱をして手を振りながら帰っていった。
綾香は笑いっぱなしだ。
「可笑しい…!…お腹痛い…」
当麻は憮然として膨れる。
「…全く!あいつらめ!今度会ったらタダじゃおかない!」
綾香は穏やかに微笑む。
「いいお友達だね。…いいな…学生時代って…」
「…綾香さん?」
「私ね、尋常小学校までしか出ていないの。それからはずっと働いていたから…」
「…そうか…」
「だから、望己さんの大学とかお友達とかきらきらした世界が眩しいの。すごく羨ましい…」
綾香は少しも卑屈な風ではなく、しみじみと、優しい口調で話す。
胸がきゅんと掴まれたようになる。
「…綾香さん…」
綾香はその美しい瞳で当麻を見つめる。
「…だから、私に色々なことを教えて。私の知らない世界のことを教えて。…望己さんのことをもっともっと知りたいの」
綾香への愛しさが溢れ出し、当麻は綾香の手を握りしめ、顔を近づける。
「…綾香さん…!なんでも教える。なんでも聞いて。綾香さんに、僕の全てを知ってもらいたい!」
綾香の長い睫毛が触れ合いそうになる。
…なんて…なんて綺麗なんだ!

…と、その時…
視線を感じ、横の窓ガラスを見ると…帰った筈の悪友達がガラス越しに目を閉じて、キスする真似をしていた。
「…お前達…!」
当麻は立ち上がる。

「キッス!キッス!キッス!」
窓ガラスの外から手拍子が聞こえる。

「キッス!キッス!キッス!」
気がつくと、周りのテーブルからも手拍子が始まっていた。
店のおばさんと主人のコックも拍手喝采だ。
綾香はまたお腹を抱えて笑いだす。
当麻は頭を掻きながら綾香を見つめて苦笑した。


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