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初戀 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第1章 Boy meets girl
当麻はカフェの楽屋口で、綾香が出てくるのを待ち構えていた。
ボーイにチップを握らせ、綾香の退出時間を聞き出していたのだ。

「当麻!頑張れ!」
「よっ!色男!DIVAを口説き落せよ!」
悪友達は散々からかいながら、帰って行った。

綾香はなかなか出て来ない。
四月とは言え、夜はなかなかに冷える。
当麻は上質なカシミヤの外套の襟を合わせながら、足踏みをした。

…と、その時、一人の少女が楽屋のドアを開け、中から出て来た。
白いブラウスに黒いロングスカート、赤と黄色のチェックのストールを肩にかけている。
…彼女だ!

長く美しい黒髪を後ろに無造作に束ね、化粧気もなく先程の舞台の彼女とは正反対の姿だが、その輝くような美しさは隠しようがなかった。

足早に通り過ぎようとする彼女に、当麻は思わず駆け寄る。
「…あの…!綾香さん!」
綾香はぴたりと脚を止め、ゆっくりと振り返る。
白粉ひとつ塗っていない肌は冴え冴えと白く透き通るような滑らかさだ。
黒々とした大きな瞳が当麻を捉える。
「…こんばんは…、あの…先程は…どうも…」
…なんだよ、望己!こんなつまらない台詞しか言えないのか…!
もっと他にあるだろ!
当麻は自分の不甲斐なさに歯痒くなる。

綾香はひたと当麻を見つめたままにこりともしない。
「…あのさ、君の歌、凄く良かったよ。凄く…感動した!」
…頑張ってこれかよ!
当麻は頭を抱えたくなる。

「…ありがとうございます」
綾香の紅を塗っていないのに紅く艶やかな唇が儀礼的な礼を呟く。
「…じゃ…」
愛想も何もなく、そのまま去ろうとする綾香に当麻は慌てて声をかけた。
「…ちょ、ちょっと待って!…あの…良かったら食事でもどうかな?…素敵な歌を聴かせて貰ったお礼にご馳走したいんだ」
綾香はちらりと振り返り、ぼそりと呟く。
「…私、これから仕事だから…」
「え?…仕事って…だって舞台はもう終わりでしょ?」
「…バイト」
「バイト?歌手の他に?」
綾香の眼がきらりと光り、形の良い眉を跳ね上げる。
そしてくるりと当麻の正面に向いたかと思うと、物凄い勢いで捲し立てた。
「…あのね!ブルジョアのお坊ちゃまには分からないかもしれないけれど、駆け出しの歌手はそれだけじゃ食べていけないの!働かないと生きていけないの!…じゃ、さよなら!」
綾香はそのままそっぽを向き、すたすたと歩き出してしまう。

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