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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 Fly me to the Moon
月城は話題を変えるように尋ねる。
「梨央様はつつがなくお寝みになられましたか?」
茅野は梨央と光が使用した杯を片付けながら頷く。
「ええ。光様のお部屋でまるで姉妹のように仲睦まじく…。ひとつの寝台でご一緒におやすみになるのよ」
「…ご一緒に…?」
月城は端正な眉を顰める。
「ええ。光様がご一緒でないと寂しいのですって。
梨央様は光様に夢中ね。お姉様、お姉様…と、まるで恋人のように一日中追いかけていらっしゃるわ」
「…そうですか…」
ふと茅野は月城の表情を見て、やんわりと励ます。
「梨央様はお姉様が欲しかったのだと思うわ。…寂しがり屋さんでいらっしゃるから…」
「…ええ、そうですね…」
月城も茅野の片付けを手伝いながら、少し寂し気に微笑む。
「…ただ、光様はあまりに梨央様と対照的すぎて…」
茅野は案じるように続ける。
「光様は外国育ちで進歩的でいらっしゃるし…それだけではなく…光様には私達にはなにか計り知れない闇のようなものを秘めていらっしゃる気がして…。あのお美しさがどこか禍々しく見えてしまう時があるの。光様の梨央様への溺愛ぶりも少し行き過ぎたようにも見えるし…」
「…茅野さん…」
「…梨央様はあの通り、純粋培養で清らかでお人を疑うことをご存知ないわ。おまけに光様に心酔しておられるから、少し心配…」
橘の危惧と同じような感想を漏らす茅野に月城は驚いたが、しかしそれがやはりと腑に落ちたような気もした。
…光様のあの異常なまでの美しさと梨央様をご覧になり、触れられる眼差しや仕草は…
やはり、どこか常軌を逸しておられるのかも知れない…。
それは私の愚かな嫉妬心から感じられるもの以外で、確かに存在しているのではないだろうか…。
考え込んだ月城に茅野は明るい口調で話し出す。
「…ちょっと私の考えすぎかも知れないけれどね。…光様は本当に梨央様にお優しいし…なにより梨央様ご自身が光様を慕っておられるし…。光様の影響でテニスをされたり、活発になられているのは悪いことではないわ」
「ええ。確かにそうですね」
「とにかく、月城さんは余りご心配されずに梨央様のお側について差し上げて」
「はい…」
茅野は朗らかに笑い
「じゃ、私はもう寝むわ。月城さんもたまにはゆっくり休んでね」
と優しく目配せをして部屋を後にした。
月城は茅野に挨拶しながら、階上に想いを馳せた。
…梨央様…。
「梨央様はつつがなくお寝みになられましたか?」
茅野は梨央と光が使用した杯を片付けながら頷く。
「ええ。光様のお部屋でまるで姉妹のように仲睦まじく…。ひとつの寝台でご一緒におやすみになるのよ」
「…ご一緒に…?」
月城は端正な眉を顰める。
「ええ。光様がご一緒でないと寂しいのですって。
梨央様は光様に夢中ね。お姉様、お姉様…と、まるで恋人のように一日中追いかけていらっしゃるわ」
「…そうですか…」
ふと茅野は月城の表情を見て、やんわりと励ます。
「梨央様はお姉様が欲しかったのだと思うわ。…寂しがり屋さんでいらっしゃるから…」
「…ええ、そうですね…」
月城も茅野の片付けを手伝いながら、少し寂し気に微笑む。
「…ただ、光様はあまりに梨央様と対照的すぎて…」
茅野は案じるように続ける。
「光様は外国育ちで進歩的でいらっしゃるし…それだけではなく…光様には私達にはなにか計り知れない闇のようなものを秘めていらっしゃる気がして…。あのお美しさがどこか禍々しく見えてしまう時があるの。光様の梨央様への溺愛ぶりも少し行き過ぎたようにも見えるし…」
「…茅野さん…」
「…梨央様はあの通り、純粋培養で清らかでお人を疑うことをご存知ないわ。おまけに光様に心酔しておられるから、少し心配…」
橘の危惧と同じような感想を漏らす茅野に月城は驚いたが、しかしそれがやはりと腑に落ちたような気もした。
…光様のあの異常なまでの美しさと梨央様をご覧になり、触れられる眼差しや仕草は…
やはり、どこか常軌を逸しておられるのかも知れない…。
それは私の愚かな嫉妬心から感じられるもの以外で、確かに存在しているのではないだろうか…。
考え込んだ月城に茅野は明るい口調で話し出す。
「…ちょっと私の考えすぎかも知れないけれどね。…光様は本当に梨央様にお優しいし…なにより梨央様ご自身が光様を慕っておられるし…。光様の影響でテニスをされたり、活発になられているのは悪いことではないわ」
「ええ。確かにそうですね」
「とにかく、月城さんは余りご心配されずに梨央様のお側について差し上げて」
「はい…」
茅野は朗らかに笑い
「じゃ、私はもう寝むわ。月城さんもたまにはゆっくり休んでね」
と優しく目配せをして部屋を後にした。
月城は茅野に挨拶しながら、階上に想いを馳せた。
…梨央様…。