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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 Fly me to the Moon
梨央は光と手を繋ぎ、テーブルから立ち上がる。
「縣様がいらっしゃる時になにかおもてなしできないかお姉様とご相談したのです。
それで、毎日練習致しました。
お姉様はヴァイオリンがとてもお上手なの。…私の腕前をカバーしてくださるわ」
恥じらいつつ、ユーモアを交えながら縣に伝える。
縣はそんな梨央を嬉しそうに、眩しそうに見つめる。
「…ありがとうございます。梨央さん、光さん」

梨央は客間のグランドピアノの前に座り、光はヴァイオリンを構え、弓を持つ。
光は生成りの麻のシンプルだが上質なシャツに、葡萄酒色の裾にスリットが入った細身のパンツ姿。
美しい黒髪の断髪に人形のように怜悧に整った美貌、細く長く透き通るような腕…。
傍らの白いドレス姿の梨央と共に並ぶと、西洋絵画に出てくる美少女と美少年のようだ。

「…光さんは美しいな…。悔しいが実にお似合いの二人だ」
縣はゆったりと長い脚を組みながら、後ろに控える月城に呟く。
「…誠に…。さすがは梨央様のお従姉妹様と存じます」
控えめに述べる月城を振り返り、縣は魅惑的な目元で微笑む。
「美しい人には寛大にならざるを得ないな。…例え恋のライバルになろうとも…」
「…縣様…」
…やはり縣様は、年々梨央様への思いを高まらせておられるのだな。
月城は静かに噛みしめる。
紳士の縣は決して早急に梨央を求めたりはしない。
梨央が少しずつ大人になるのを辛抱強く優しく待っているのだろう。
その想いに応えるかのように、年を追うごとに美しく臈長けて薫り高く成長する梨央…。
…美しく稀有な白薔薇が咲き染めるのももう間も無くだろう…。
縣様は、いずれ梨央様に求愛なさるのだろうな…。
月城の胸は切なく痛む。
…また…私はいつまでも未練がましい…。
月城は首を振る。

梨央の奏でる美しく切ないピアノの音色が聞こえる。
…それを静かに、優雅に追いかけるように響く光のヴァイオリンの音色…。
…シューマンのロマンス。
客間は夢のように美しい音楽に包まれる。
縣も、月城も…たまたま廊下を通りかかったメイド長の茅野と副料理長の花も…その美しい光景と音色に心を奪われ、暫し酔う。
「…なんてお美しいお嬢様方…」
花は小さく呟く。
「本当ね。…お美しくて気高くて…これ程お美しいお嬢様は他にはおられないわ」
…月城さんが恋をされるのは無理からぬことだわ…。
花は寂しげに微笑んだ。
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