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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 Fly me to the Moon
美しい二人のピアノとヴァイオリンの協奏曲が奏で終わる。
縣は満面の笑みで拍手を送る。
「素晴らしい演奏でした!梨央さんも、光さんも。ありがとうございます」
光は梨央を見て、優しく微笑む。
「梨央さん、本当に素晴らしいピアノだったわ」
梨央はほっとしたように微笑み、椅子から立ち上がり、縣にお辞儀をしようとしたその刹那、不意に瞼を閉じ崩れ落ちそうになった。
一瞬でそれを察知した月城が梨央に駆け寄り、崩れ落ちかかる梨央を抱きとめる。
月城の腕に抱きとられると同時に、梨央は気を失う。
「梨央様!梨央様!」
月城は梨央を抱きしめながら、名前を呼ぶ。
縣が梨央に駆け寄りながらも冷静に指示を出す。
「医師を、梨央さんのかかりつけ医を呼んでください」
廊下にいた茅野が素早く医師を呼びに行く。
光は梨央の側で声をかける。
「梨央さん!梨央さん!しっかりして!」
月城の腕の中の梨央は透き通るような肌の色が更に青ざめ、閉じられた睫毛が瞼の下に濃い影を落としている。
唇は血の気がなく薄くやや開かれて、苦しげな吐息が聞こえる。
「…梨央様!しっかりなさってください!」
月城は思わず、梨央の生気のない頬に温かみを取り戻そうと、そっと撫でた。
…ふと、梨央の薄い瞼がゆっくりと開かれる。
「梨央さん!大丈夫ですか?」
梨央の傍らに駆け寄ってきた縣のこのように緊迫した表情を初めて見たと月城は思った。
「梨央様、梨央様、」
梨央は震える唇でそっと囁く。
「…大丈夫です…あの…大丈夫だから…みんな…出て行って…」
「梨央さん?…どうされたのですか?」
月城は梨央を抱え直し、抱き上げたまま立ち上がろうとした。
「…とにかく、梨央様のお部屋のベッドにお運びします」
梨央は首を振る。
「いいの。…大丈夫だから…お願いだから…縣様と月城は出て行ってください…お願い…!」
梨央は青ざめた頬にはらはらと透明な涙を流しながら激しく二人を拒む。
途方にくれた縣と月城を他所に、光は何かを察知したかのように、梨央の手を握りながら声をかける。
「梨央さん、大丈夫よ。私が付いているわ」
「光お姉様…」
梨央は力なく涙を流し続ける。
光は月城から梨央を受け取り、愛しげに梨央の髪を撫でながらもきっぱりと告げた。
「お二人とも席を外して。梨央さんには私が付いています。お医者様がいらしたら、こちらにご案内して」
縣は満面の笑みで拍手を送る。
「素晴らしい演奏でした!梨央さんも、光さんも。ありがとうございます」
光は梨央を見て、優しく微笑む。
「梨央さん、本当に素晴らしいピアノだったわ」
梨央はほっとしたように微笑み、椅子から立ち上がり、縣にお辞儀をしようとしたその刹那、不意に瞼を閉じ崩れ落ちそうになった。
一瞬でそれを察知した月城が梨央に駆け寄り、崩れ落ちかかる梨央を抱きとめる。
月城の腕に抱きとられると同時に、梨央は気を失う。
「梨央様!梨央様!」
月城は梨央を抱きしめながら、名前を呼ぶ。
縣が梨央に駆け寄りながらも冷静に指示を出す。
「医師を、梨央さんのかかりつけ医を呼んでください」
廊下にいた茅野が素早く医師を呼びに行く。
光は梨央の側で声をかける。
「梨央さん!梨央さん!しっかりして!」
月城の腕の中の梨央は透き通るような肌の色が更に青ざめ、閉じられた睫毛が瞼の下に濃い影を落としている。
唇は血の気がなく薄くやや開かれて、苦しげな吐息が聞こえる。
「…梨央様!しっかりなさってください!」
月城は思わず、梨央の生気のない頬に温かみを取り戻そうと、そっと撫でた。
…ふと、梨央の薄い瞼がゆっくりと開かれる。
「梨央さん!大丈夫ですか?」
梨央の傍らに駆け寄ってきた縣のこのように緊迫した表情を初めて見たと月城は思った。
「梨央様、梨央様、」
梨央は震える唇でそっと囁く。
「…大丈夫です…あの…大丈夫だから…みんな…出て行って…」
「梨央さん?…どうされたのですか?」
月城は梨央を抱え直し、抱き上げたまま立ち上がろうとした。
「…とにかく、梨央様のお部屋のベッドにお運びします」
梨央は首を振る。
「いいの。…大丈夫だから…お願いだから…縣様と月城は出て行ってください…お願い…!」
梨央は青ざめた頬にはらはらと透明な涙を流しながら激しく二人を拒む。
途方にくれた縣と月城を他所に、光は何かを察知したかのように、梨央の手を握りながら声をかける。
「梨央さん、大丈夫よ。私が付いているわ」
「光お姉様…」
梨央は力なく涙を流し続ける。
光は月城から梨央を受け取り、愛しげに梨央の髪を撫でながらもきっぱりと告げた。
「お二人とも席を外して。梨央さんには私が付いています。お医者様がいらしたら、こちらにご案内して」