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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 Fly me to the Moon
小林医師が部屋を辞したと入れ替わりに、光が入って来た。
すらりとした西洋人のような姿と美貌は、目を奪われずにはいられない。
「小林先生にお聞きになられたかしら?」
光は謎めいた猫のような表情のまま近づく。
縣は気遣わしげに尋ねた。
「はい。…それで梨央さんのご様子は?まだ取り乱しておられますか?」
光はさらりとした髪を揺らしながら首を振る。
「いいえ、今は大分落ち着かれたわ。先ほどまではひどく泣いていたのだけど…」
月城の胸は締め付けられる。
未知のものをひどく怖がる梨央だ。
初めての体験に、どれほど深く動揺しただろうか。
縣も同じ思いらしく、整った眉を顰めて溜息を吐く。
「おいたわしい…梨央さんは繊細な方ですからね…」
光はふっと笑う。
「本当ね。私なんか10歳の時に始まったけれど、けろっとしていたけれどね。梨央さんは14歳でしょう?…奥手なくらいだわ。…まあ梨央さんらしいけれど」
月城は気まずげに眼鏡を押し上げ、縣は拳を丸めて咳払いをする。
そんな二人の様子を興味深げに見つめながら、光は艶めいた声で語りかける。
「…とにかく、これで梨央さんは一人前の女性になられた訳だわ。…もう子供を産める身体になられたのですもの…」
縣と月城は同時に息を呑む。
縣は行き過ぎた光の発言を咎めるように、口を開く。
「光さん、お言葉が過ぎますよ」
光の美しい瞳がきらりと光った。
「あら、事実じゃない?…それに…縣さん、貴方はこの日を待ちわびていらしたのではなくて?」
「光さん!」
厳しい声を上げた縣に、光は冷たく笑う。
「…綺麗ごとばかり仰らなくてよろしいのよ。美しい白薔薇の蕾が花開くのは、誰だって待ち遠しいものだもの。…ただし、それは貴方お一人ではないことをお忘れにならないでね。美しい白薔薇の周りには、魅力的な蝶が常に飛んでいるものよ」
光は縣と月城を同時に見つめた。
月城ははっと目を見開く。
「…光さん。いささか言葉遊びが過ぎるようですね」
縣が大人らしく諌めるのを、光は一蹴する。
打って変わって朗らかな笑顔を作り、
「そうかしら?お気に障ったのならごめんなさい。…とにかく、梨央さんは暫くは殿方にお会いしたくないそうですから、私から申し上げておくわ。皆様、ご機嫌よう」
光は高らかに笑いながら、部屋を後にした。
すらりとした西洋人のような姿と美貌は、目を奪われずにはいられない。
「小林先生にお聞きになられたかしら?」
光は謎めいた猫のような表情のまま近づく。
縣は気遣わしげに尋ねた。
「はい。…それで梨央さんのご様子は?まだ取り乱しておられますか?」
光はさらりとした髪を揺らしながら首を振る。
「いいえ、今は大分落ち着かれたわ。先ほどまではひどく泣いていたのだけど…」
月城の胸は締め付けられる。
未知のものをひどく怖がる梨央だ。
初めての体験に、どれほど深く動揺しただろうか。
縣も同じ思いらしく、整った眉を顰めて溜息を吐く。
「おいたわしい…梨央さんは繊細な方ですからね…」
光はふっと笑う。
「本当ね。私なんか10歳の時に始まったけれど、けろっとしていたけれどね。梨央さんは14歳でしょう?…奥手なくらいだわ。…まあ梨央さんらしいけれど」
月城は気まずげに眼鏡を押し上げ、縣は拳を丸めて咳払いをする。
そんな二人の様子を興味深げに見つめながら、光は艶めいた声で語りかける。
「…とにかく、これで梨央さんは一人前の女性になられた訳だわ。…もう子供を産める身体になられたのですもの…」
縣と月城は同時に息を呑む。
縣は行き過ぎた光の発言を咎めるように、口を開く。
「光さん、お言葉が過ぎますよ」
光の美しい瞳がきらりと光った。
「あら、事実じゃない?…それに…縣さん、貴方はこの日を待ちわびていらしたのではなくて?」
「光さん!」
厳しい声を上げた縣に、光は冷たく笑う。
「…綺麗ごとばかり仰らなくてよろしいのよ。美しい白薔薇の蕾が花開くのは、誰だって待ち遠しいものだもの。…ただし、それは貴方お一人ではないことをお忘れにならないでね。美しい白薔薇の周りには、魅力的な蝶が常に飛んでいるものよ」
光は縣と月城を同時に見つめた。
月城ははっと目を見開く。
「…光さん。いささか言葉遊びが過ぎるようですね」
縣が大人らしく諌めるのを、光は一蹴する。
打って変わって朗らかな笑顔を作り、
「そうかしら?お気に障ったのならごめんなさい。…とにかく、梨央さんは暫くは殿方にお会いしたくないそうですから、私から申し上げておくわ。皆様、ご機嫌よう」
光は高らかに笑いながら、部屋を後にした。