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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 Fly me to the Moon

数日後の晴天に恵まれたある日、梨央と光は縣の招きで浅間山の麓にある縣の別荘を訪れていた。
軽井沢の一等地にある別荘とは別に、縣は山荘のような別荘を所有している。
スイスの山小屋を模したと言われる白壁と赤い屋根が洒落ている珍しい様式の建物は、建築好きな縣がデザインと設計をした。
乗馬好きな縣は山荘の近くに牧場と厩を所有しており、避暑の際には遠乗りを楽しむのを常としていた。
お付きで随行した月城は、洗練された別荘と広大な牧場や選び抜かれたサラブレッドが駆け回る馬場を見て、改めて縣の財力の深さを認識した。
そしてやはり梨央の後見人に相応しい人物だと納得する。
…このような日本を代表するような大財閥の御曹司に愛される梨央様はお幸せだ…。
白いつば広の帽子に白いシフォンのウエストが絞られたドレスを着て、レースに縁取られた日傘をさした梨央を見つめる。
夏の陽射しの元、普段より生き生きとした表情を浮かべ、広々とした馬場や牧場に目を見張っている梨央は、見慣れた月城ですら思わず見惚れてしまうほどの可憐な美しさであった。
…その証拠に…
縣様はまるで愛しい姫君を見るかのように梨央様を見つめていらっしゃる。
馬丁が連れてきたこの春に生まれたばかりだという子馬に、人参をやりながら頬を紅潮させる梨央を縣は優しく見つめている。
縣は仕立ての良い夏用の乗馬服に黒い乗馬ブーツと言う颯爽とした出で立ちである。
背が高く、日本人離れした男らしい体格の縣には実によく似合う。
「梨央さん、どうですか?馬に乗ってみませんか?」
縣は愛おしむかのように、傍らで子馬の鼻面を嬉しそうに撫でている梨央の顔を覗き込む。
梨央は驚いて、縣を見上げる。
「え?わ、私が乗馬ですか?」
「ええ。…私の愛馬を東京から連れてきているのです。アルフレッドはおとなしくて優秀な馬ですから、初心者でも何の心配もいりませんよ」
「…で、でも…大丈夫かしら…」
怖気づく梨央に縣は重ねて提案する。
「お一人が不安なら、私がご一緒しましょう。梨央さんは前に乗られるだけでよろしいですよ」
梨央はようやくほっと頷いた。
「…縣様とご一緒なら…」
縣は優しく微笑み、梨央を見つめる。
「良かった…」
そして梨央の隣の光にも穏やかに声をかける。
「光さんも是非ご一緒に。アラブ種の良い馬がおります。…光さんは乗馬がお得意と伺っておりますから…」
軽井沢の一等地にある別荘とは別に、縣は山荘のような別荘を所有している。
スイスの山小屋を模したと言われる白壁と赤い屋根が洒落ている珍しい様式の建物は、建築好きな縣がデザインと設計をした。
乗馬好きな縣は山荘の近くに牧場と厩を所有しており、避暑の際には遠乗りを楽しむのを常としていた。
お付きで随行した月城は、洗練された別荘と広大な牧場や選び抜かれたサラブレッドが駆け回る馬場を見て、改めて縣の財力の深さを認識した。
そしてやはり梨央の後見人に相応しい人物だと納得する。
…このような日本を代表するような大財閥の御曹司に愛される梨央様はお幸せだ…。
白いつば広の帽子に白いシフォンのウエストが絞られたドレスを着て、レースに縁取られた日傘をさした梨央を見つめる。
夏の陽射しの元、普段より生き生きとした表情を浮かべ、広々とした馬場や牧場に目を見張っている梨央は、見慣れた月城ですら思わず見惚れてしまうほどの可憐な美しさであった。
…その証拠に…
縣様はまるで愛しい姫君を見るかのように梨央様を見つめていらっしゃる。
馬丁が連れてきたこの春に生まれたばかりだという子馬に、人参をやりながら頬を紅潮させる梨央を縣は優しく見つめている。
縣は仕立ての良い夏用の乗馬服に黒い乗馬ブーツと言う颯爽とした出で立ちである。
背が高く、日本人離れした男らしい体格の縣には実によく似合う。
「梨央さん、どうですか?馬に乗ってみませんか?」
縣は愛おしむかのように、傍らで子馬の鼻面を嬉しそうに撫でている梨央の顔を覗き込む。
梨央は驚いて、縣を見上げる。
「え?わ、私が乗馬ですか?」
「ええ。…私の愛馬を東京から連れてきているのです。アルフレッドはおとなしくて優秀な馬ですから、初心者でも何の心配もいりませんよ」
「…で、でも…大丈夫かしら…」
怖気づく梨央に縣は重ねて提案する。
「お一人が不安なら、私がご一緒しましょう。梨央さんは前に乗られるだけでよろしいですよ」
梨央はようやくほっと頷いた。
「…縣様とご一緒なら…」
縣は優しく微笑み、梨央を見つめる。
「良かった…」
そして梨央の隣の光にも穏やかに声をかける。
「光さんも是非ご一緒に。アラブ種の良い馬がおります。…光さんは乗馬がお得意と伺っておりますから…」

