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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 Fly me to the Moon

光はその謎めいたひんやりした美貌に笑みを浮かべ、
「ありがとうございます。勿論お言葉に甘えるつもりで、乗馬服も用意してまいりましたわ」
と快活に答える。
これには縣も笑いを漏らす。
「光栄ですよ、光さんにそんなに楽しみにしていただけて」
光は梨央の肩を愛しげに抱きよせる。
「本当は梨央さんの分も用意したのですけれど、高いところが怖いから嫌と尻込みされて…」
梨央は頬を赤らめて抗議する。
「嫌だわ、光お姉様!縣様には内緒とお約束したのに…」
「あはは…。大丈夫ですよ。…梨央さんはドレスのままで。横乗りでいきましょう。…走らせずにゆっくりまいりますから、ご心配なく。…では光さんは別荘の方でお着替えされてきてください。今、メイドに案内させます。…月城は、乗馬は出来たよね?」
縣は梨央と光の影のように控えていた月城に声をかける。
「…はい、少々ですが…」
「さすがだ。では私の乗馬服を貸すので、光さんの護衛をして差し上げてくれ。…大切な麻宮侯爵令嬢になにかあったら一大事だからな」
「恐れ入ります」
光は美しい髪をかきあげ、鼻を鳴らす。
「…せっかく早駆けしようと思ったのに。…お上品にお散歩しなきゃならないの?」
梨央が遠慮勝ちに、しかしはっきりと説明する。
「光お姉様、月城はお父様仕込みの乗馬の腕なのよ。早駆けも、お父様に付いていける位巧みだとお父様が感心されていたわ」
光は唇の端に笑みを浮かべ、梨央の頬を軽くつまむ。
「貴女の大好きな執事は、何でもできるのね。ハンサムで秀才で仕事も完璧…非の打ち所がない素晴らしい執事だわ。」
「光お姉様…!」
困惑した表情の梨央をさりげなく庇い、月城は一礼し、慎み深く口を開く。
「とんでもございません。…光様の足手纏いにならぬよう、気をつけてまいります」
奇妙な沈黙を破ったのは、縣であった。
「さあ、では光さんと月城は別荘の方に…。皐月、お二人をご案内して差し上げてくれ。…梨央さん、梨央さんは私とご一緒に隣の牧場にまいりましょう。…先週子牛が生まれたばかりなのです。ご覧になりませんか?」
梨央の顔が輝く。
「子牛の赤ちゃん?拝見したいわ!」
「ではこちらに…」
縣は梨央の背に手を当て、優雅にエスコートする。
…お似合いのお二人だ…。
…と、光が月城の後ろから歌うようにしかし、冷淡に囁いた。
「本当にお似合いだわ。…悔しい位に…ね」
「ありがとうございます。勿論お言葉に甘えるつもりで、乗馬服も用意してまいりましたわ」
と快活に答える。
これには縣も笑いを漏らす。
「光栄ですよ、光さんにそんなに楽しみにしていただけて」
光は梨央の肩を愛しげに抱きよせる。
「本当は梨央さんの分も用意したのですけれど、高いところが怖いから嫌と尻込みされて…」
梨央は頬を赤らめて抗議する。
「嫌だわ、光お姉様!縣様には内緒とお約束したのに…」
「あはは…。大丈夫ですよ。…梨央さんはドレスのままで。横乗りでいきましょう。…走らせずにゆっくりまいりますから、ご心配なく。…では光さんは別荘の方でお着替えされてきてください。今、メイドに案内させます。…月城は、乗馬は出来たよね?」
縣は梨央と光の影のように控えていた月城に声をかける。
「…はい、少々ですが…」
「さすがだ。では私の乗馬服を貸すので、光さんの護衛をして差し上げてくれ。…大切な麻宮侯爵令嬢になにかあったら一大事だからな」
「恐れ入ります」
光は美しい髪をかきあげ、鼻を鳴らす。
「…せっかく早駆けしようと思ったのに。…お上品にお散歩しなきゃならないの?」
梨央が遠慮勝ちに、しかしはっきりと説明する。
「光お姉様、月城はお父様仕込みの乗馬の腕なのよ。早駆けも、お父様に付いていける位巧みだとお父様が感心されていたわ」
光は唇の端に笑みを浮かべ、梨央の頬を軽くつまむ。
「貴女の大好きな執事は、何でもできるのね。ハンサムで秀才で仕事も完璧…非の打ち所がない素晴らしい執事だわ。」
「光お姉様…!」
困惑した表情の梨央をさりげなく庇い、月城は一礼し、慎み深く口を開く。
「とんでもございません。…光様の足手纏いにならぬよう、気をつけてまいります」
奇妙な沈黙を破ったのは、縣であった。
「さあ、では光さんと月城は別荘の方に…。皐月、お二人をご案内して差し上げてくれ。…梨央さん、梨央さんは私とご一緒に隣の牧場にまいりましょう。…先週子牛が生まれたばかりなのです。ご覧になりませんか?」
梨央の顔が輝く。
「子牛の赤ちゃん?拝見したいわ!」
「ではこちらに…」
縣は梨央の背に手を当て、優雅にエスコートする。
…お似合いのお二人だ…。
…と、光が月城の後ろから歌うようにしかし、冷淡に囁いた。
「本当にお似合いだわ。…悔しい位に…ね」

