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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 Fly me to the Moon

縣の馬を操る腕は巧みで、しかも優雅であった。
最初は怖がっていた梨央だがすぐに縣に身を預け、馬場の散策を楽しみ出したようだ。
縣の逞しい背中にしがみつく梨央の白くほっそりとした腕に、月城は胸がちくりと痛むのを感じた。
「…そんな風に黙って見つめているだけでは、梨央さんは貴方のものにはならないわよ」
はっと、光を振り返る。
「私は何も…」
慌てて口を開いた月城に、光は珍しく真顔で言い放つ。
「私は貴方みたいにはならない。欲しいものは欲しいと言うわ。…そして必ず手に入れる」
「光様!」
光はふわりと馬に跨り、手綱を取る。
「早駆けするわよ。…着いて来られるなら来てご覧なさい」
妖しい光を放つ瞳に笑みを浮かべ、光は軽く鞭をくれ、颯爽と馬を走らせた。
「光様!お待ちください!」
月城は素早く馬に乗り、光の馬を追う。
馬場からその様子を見ていた梨央は、思わず呟く。
「光お姉様…月城…」
「…美しきアマゾネスのようですね、光さんは」
縣は賞賛混じりの言葉を口にする。
「…光お姉様は、私の憧れです。…私はお姉様みたいになりたかった…強く、美しく、賢く…」
「光さんは確かに魅力的ですが、私には梨央さんが世界で一番お美しい…そして特別な人です」
梨央は思わず振り返る。
縣の男らしく美しい目は真摯な色を帯び、梨央を見つめていた。
その目はいつも穏やかな笑みを浮かべている縣とは異なり、梨央が見たことがない熱い情熱を感じさせるものであった。
「…縣様…」
「梨央さんは、私のことをどう思っていらっしゃいますか?」
縣は梨央から眼を離さない。
思わず眼を伏せて口篭る。
「…どう…と仰られても…あの…」
縣は不意に梨央の手を握りしめた。
「では月城と私と、どちらがお好きですか?」
思ってもみない問いかけに、梨央は縣を見上げる。
「…そんな…縣様と月城を比べることなんてできませんわ。縣様は私のお兄様のように慕わしい方ですし、月城は…」
「月城は?」
「月城は…私にとって常に側にいて守ってくれる騎士のような存在なのです」
「…騎士…ですか…」
「はい。月城は困った時や悲しい時に、必ず側にいて私を守ってくれるのです。…比べることなどできません」
縣はふっと溜息をつき、少し寂しげに笑った。
「…月城が羨ましい…」
そして
「すみません。…梨央さんを困らせてしまいましたね」
と、優しく詫びた。
最初は怖がっていた梨央だがすぐに縣に身を預け、馬場の散策を楽しみ出したようだ。
縣の逞しい背中にしがみつく梨央の白くほっそりとした腕に、月城は胸がちくりと痛むのを感じた。
「…そんな風に黙って見つめているだけでは、梨央さんは貴方のものにはならないわよ」
はっと、光を振り返る。
「私は何も…」
慌てて口を開いた月城に、光は珍しく真顔で言い放つ。
「私は貴方みたいにはならない。欲しいものは欲しいと言うわ。…そして必ず手に入れる」
「光様!」
光はふわりと馬に跨り、手綱を取る。
「早駆けするわよ。…着いて来られるなら来てご覧なさい」
妖しい光を放つ瞳に笑みを浮かべ、光は軽く鞭をくれ、颯爽と馬を走らせた。
「光様!お待ちください!」
月城は素早く馬に乗り、光の馬を追う。
馬場からその様子を見ていた梨央は、思わず呟く。
「光お姉様…月城…」
「…美しきアマゾネスのようですね、光さんは」
縣は賞賛混じりの言葉を口にする。
「…光お姉様は、私の憧れです。…私はお姉様みたいになりたかった…強く、美しく、賢く…」
「光さんは確かに魅力的ですが、私には梨央さんが世界で一番お美しい…そして特別な人です」
梨央は思わず振り返る。
縣の男らしく美しい目は真摯な色を帯び、梨央を見つめていた。
その目はいつも穏やかな笑みを浮かべている縣とは異なり、梨央が見たことがない熱い情熱を感じさせるものであった。
「…縣様…」
「梨央さんは、私のことをどう思っていらっしゃいますか?」
縣は梨央から眼を離さない。
思わず眼を伏せて口篭る。
「…どう…と仰られても…あの…」
縣は不意に梨央の手を握りしめた。
「では月城と私と、どちらがお好きですか?」
思ってもみない問いかけに、梨央は縣を見上げる。
「…そんな…縣様と月城を比べることなんてできませんわ。縣様は私のお兄様のように慕わしい方ですし、月城は…」
「月城は?」
「月城は…私にとって常に側にいて守ってくれる騎士のような存在なのです」
「…騎士…ですか…」
「はい。月城は困った時や悲しい時に、必ず側にいて私を守ってくれるのです。…比べることなどできません」
縣はふっと溜息をつき、少し寂しげに笑った。
「…月城が羨ましい…」
そして
「すみません。…梨央さんを困らせてしまいましたね」
と、優しく詫びた。

