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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 Fly me to the Moon

「私は、その時誓ったのです。この美しいお方をお護りするためなら何でもしよう。このお方のお側に生涯いられるためなら何でもしよう…と。
ですから、私は梨央様のお側にいられるだけで法外な幸せなのです…」
月城は光に静かに語ると優しく微笑んだ。
光は胸を突かれたような真摯な表情をしていたが、ふっと我に返り、いつもの皮肉めいた笑みを唇の端に浮かべ月城を見やった。
「…綺麗ごとすぎるわ」
「そうかも知れません…。けれど、私は恋よりも愛を…梨央様を包み込むような愛を捧げることを選んだのです。…まだまだ未熟ですが…」
恥ずかしげに笑う月城に、光はやや挑戦的な眼差しを向け、わざと婀娜めいた仕草で首筋に抱きついた。
「…私を抱かないの…?私には魅力がない?」
月城は光をじっと見つめる。
「いいえ…。…自分を抑えるのが苦しいほど、光様は魅力的です…」
「だったらなぜ?」
月城は哀しげな微笑みを浮かべる。
「…貴方は麻宮侯爵令嬢です。…私などが手を触れて良いようなお方ではありません」
「…そんなの時代錯誤だわ。…私では梨央さんの代わりにはならないからでしょう?」
不服そうに唇を歪める光の手を月城は優しく慈しむように握りしめた。
「…いいえ。それは違います。光様は光様です。
光様は眩しいほどにお美しいです。そして、やんごとないほどに気高いお方です。他のどなたでもない光様だからこそ、お美しいのです。
その尊いお身体を簡単に人に投げ出してはなりません」
光ははっとして、月城を見つめる。
「…月城…」
月城は光の白魚のように透き通る美しい手の甲に、恭しくキスをする。
「…ご自分をお大切にされて、どうかお幸せな人生を歩まれて下さい」
「月城…!」
何か言いたげな光に、兄のような慈しみ深い笑みを向け、そっと告げる。
「…光様と過ごせたこの艶めいた時間は私の生涯の宝物です。…一生忘れません」
光は頬を僅かに赤らめ、月城から顔を背ける。
「…馬鹿みたい…。本当に…馬鹿みたいに実直なんだから…!」
拗ねた子供のような光を月城は優しく見つめる。
そして、丘の上からの風景に目をやり、眼鏡をかけ直す。
「…実に美しい景色ですね。…光様と眺めているからかもしれませんが…」
「…馬鹿…」
光は小さく呟き、そっと月城の美しい彫像のような横顔を見上げた。
月城の端正な口元には穏やかな笑みが浮かんでいた。
ですから、私は梨央様のお側にいられるだけで法外な幸せなのです…」
月城は光に静かに語ると優しく微笑んだ。
光は胸を突かれたような真摯な表情をしていたが、ふっと我に返り、いつもの皮肉めいた笑みを唇の端に浮かべ月城を見やった。
「…綺麗ごとすぎるわ」
「そうかも知れません…。けれど、私は恋よりも愛を…梨央様を包み込むような愛を捧げることを選んだのです。…まだまだ未熟ですが…」
恥ずかしげに笑う月城に、光はやや挑戦的な眼差しを向け、わざと婀娜めいた仕草で首筋に抱きついた。
「…私を抱かないの…?私には魅力がない?」
月城は光をじっと見つめる。
「いいえ…。…自分を抑えるのが苦しいほど、光様は魅力的です…」
「だったらなぜ?」
月城は哀しげな微笑みを浮かべる。
「…貴方は麻宮侯爵令嬢です。…私などが手を触れて良いようなお方ではありません」
「…そんなの時代錯誤だわ。…私では梨央さんの代わりにはならないからでしょう?」
不服そうに唇を歪める光の手を月城は優しく慈しむように握りしめた。
「…いいえ。それは違います。光様は光様です。
光様は眩しいほどにお美しいです。そして、やんごとないほどに気高いお方です。他のどなたでもない光様だからこそ、お美しいのです。
その尊いお身体を簡単に人に投げ出してはなりません」
光ははっとして、月城を見つめる。
「…月城…」
月城は光の白魚のように透き通る美しい手の甲に、恭しくキスをする。
「…ご自分をお大切にされて、どうかお幸せな人生を歩まれて下さい」
「月城…!」
何か言いたげな光に、兄のような慈しみ深い笑みを向け、そっと告げる。
「…光様と過ごせたこの艶めいた時間は私の生涯の宝物です。…一生忘れません」
光は頬を僅かに赤らめ、月城から顔を背ける。
「…馬鹿みたい…。本当に…馬鹿みたいに実直なんだから…!」
拗ねた子供のような光を月城は優しく見つめる。
そして、丘の上からの風景に目をやり、眼鏡をかけ直す。
「…実に美しい景色ですね。…光様と眺めているからかもしれませんが…」
「…馬鹿…」
光は小さく呟き、そっと月城の美しい彫像のような横顔を見上げた。
月城の端正な口元には穏やかな笑みが浮かんでいた。

