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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 Fly me to the Moon
大きな樫の木に馬を繋ぎ、月城と光は木陰に腰を下ろして小高い丘からの景色を見渡す。
光は静かに押し黙ったまま浅間山の風景を眺めている。
…無口だが機嫌が悪いわけではなさそうだ。
時折目が合うと、慌てて怒ったように顔を背けるが、それはどこか照れているような表情にも見え…
…いや、そんなはずはないな。
光様が私に照れるはずなどない。
自分の自惚れた考えに苦笑した時、月城の肩先に温かいものが触れた。
ふと見ると、光が月城に頭をもたせかかっている。
驚いて光の顔を見る。
光は繊細で美しい瞼を閉じ、月城にもたれかかったまま呟く。
「…少し疲れたわ。寝かせて」
瞼を閉じた光は、無防備な…どこか頼りなげな子供のような顔をしていた。
月城はその可愛らしさに思わず、愛しさが込み上げてきた。
「…はい。どうぞ、お寝みなさいませ」
月城は優しく光の肩を抱き寄せた。
光は素直に月城の胸に顔を寄せる。

…可愛らしい方だ…。
本当の光様は、繊細で素直でお優しい方なのだ。
月城の胸が灯りが灯ったかのように、温かくなる。
…そっと、その白磁にうっすらと朱を刷いたような美しい頬に手を伸ばし…しかし、やがて、静かに引っ込めた。
…何をしようとしているのだ、私は…。
月城はため息を吐きながら、首を振る。
また、叶わぬ恋をしようとでもしているのか…?
光の美しく硝子細工のように繊細な美貌を見つめながら自答する。

…私はもう、苦しい恋はしたくはない…。
光様は侯爵令嬢だ…。
いずれは大家の貴族の方と結ばれるお方…。
私とは相容れぬ人生を歩まれるお方だ…。
月城は寂しげな微笑を浮かべる。
…私は、光様のお幸せを遠くからお祈りするのだ。
これからも、ずっと…。
月城はそっと、光の肩を抱き寄せた。




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