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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 Fly me to the Moon

幼い頃から梨央は不安なことがあると必ず、月城に縋って来た。
今日の眼も同じだった。
…どうしたら良いか分からない…
縣と二人きりになって、何が起こるのか?
何の話があるのか?
梨央の不安と緊張が如実に伝わって来る。
月城は眼差しで梨央を宥め、頷いて見せた。
「…梨央様、縣様のお側で怖いことが起こるはずもございません。縣様は伯爵同様、梨央様を一番にお守りくださる方ですから。お任せいたしましょう」
梨央に言い聞かせると同時に、縣にも確認の意味で聞かせたかった月城である。
縣はふっと笑う。
「…実に良く出来た執事だ。その通りです。梨央さん。私を信頼されてください」
梨央は諦めたように眼を伏せ、小さく頷いた。
縣の胸は少し痛んだ。
梨央を不安にさせるつもりは毛頭なかった縣である。
…と、同時にこの可憐な稀有な花のような少女をこのままこの山荘に閉じ込めてしまいたい衝動的な欲求にかられる。
…私は…どうしたのだ…。
いつもそうだ。梨央さんのことになると、冷静な判断が出来なくなる。
縣は唇を歪めた。
月城が感情の一切こもらない声で伝える。
「それでは梨央様の夜着や就寝の用意をしてまいります」
それに対し、縣が静かに答える。
「必要ない。
…梨央さんの衣類や身の回りに必要なものは、既にこの山荘に揃えてあります。専属のメイドも置きます。梨央さんが困ることなど何一つありません。…どうぞご安心なさってご滞在ください」
余りの用意周到さに月城と梨央は黙り込み、光が声を立てて笑い出した。
「縣様は最初から梨央さんをこの山荘に住まわせるおつもりだったのかしら?…陽気で穏やかな仮面は嘘?…怖い方。…でも、本当に梨央さんを傷つけたり、悲しませたりなさったら、私は貴方を許さないわ。…覚えていらしてね?」
「御意。麗しのお姫様」
縣はわざと芝居がかった恭しい言葉を使い、お辞儀をしてみせた。
縣と光の間に、青く冷たい火花が散った。
今日の眼も同じだった。
…どうしたら良いか分からない…
縣と二人きりになって、何が起こるのか?
何の話があるのか?
梨央の不安と緊張が如実に伝わって来る。
月城は眼差しで梨央を宥め、頷いて見せた。
「…梨央様、縣様のお側で怖いことが起こるはずもございません。縣様は伯爵同様、梨央様を一番にお守りくださる方ですから。お任せいたしましょう」
梨央に言い聞かせると同時に、縣にも確認の意味で聞かせたかった月城である。
縣はふっと笑う。
「…実に良く出来た執事だ。その通りです。梨央さん。私を信頼されてください」
梨央は諦めたように眼を伏せ、小さく頷いた。
縣の胸は少し痛んだ。
梨央を不安にさせるつもりは毛頭なかった縣である。
…と、同時にこの可憐な稀有な花のような少女をこのままこの山荘に閉じ込めてしまいたい衝動的な欲求にかられる。
…私は…どうしたのだ…。
いつもそうだ。梨央さんのことになると、冷静な判断が出来なくなる。
縣は唇を歪めた。
月城が感情の一切こもらない声で伝える。
「それでは梨央様の夜着や就寝の用意をしてまいります」
それに対し、縣が静かに答える。
「必要ない。
…梨央さんの衣類や身の回りに必要なものは、既にこの山荘に揃えてあります。専属のメイドも置きます。梨央さんが困ることなど何一つありません。…どうぞご安心なさってご滞在ください」
余りの用意周到さに月城と梨央は黙り込み、光が声を立てて笑い出した。
「縣様は最初から梨央さんをこの山荘に住まわせるおつもりだったのかしら?…陽気で穏やかな仮面は嘘?…怖い方。…でも、本当に梨央さんを傷つけたり、悲しませたりなさったら、私は貴方を許さないわ。…覚えていらしてね?」
「御意。麗しのお姫様」
縣はわざと芝居がかった恭しい言葉を使い、お辞儀をしてみせた。
縣と光の間に、青く冷たい火花が散った。

