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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 Fly me to the Moon
月城のメルセデスの灯りが遠ざかり、やがて消えていった。
梨央はふいに世界で一人きりに取り残されたかのような寂しさに襲われた。
月城が梨央の前から去る姿などを見たのは初めてだからだ。
月城はいつも梨央の影のように付き添い、寄り添っていたのに…。
今夜は一人だ。
光もいないし、馴染んだメイドや下僕もいない。
梨央は途方にくれたような表情でメルセデスが去った闇をじっと見つめていた。
…と、梨央の肩に温かく大きな手が置かれた。
「…梨央さん、さあ、こちらにどうぞ」
そのまま肩を優しく抱き寄せられる。
思わず、びくりと肩を竦めた梨央に縣は悲しげな眼をした。
「私を怖がらないでください。…私は、梨央さんにそんなお顔をさせるために、この山荘にお引き止めしたのではないのです」
梨央は慌てて、首を振る。
「違います。怖いのではありません。…私…どうしたら良いのかわからないのです。…縣様と二人きりになって…何をお話したら良いのか…私は年より幼くて…縣様を楽しませることが何一つできません。だから…」
縣は感激したように梨央の髪を優しく撫でる。
そして、梨央の顔を愛しげに覗きこみ、笑いかけた。
「…梨央さんはいてくださるだけで良いのです。私の家に梨央さんがいる…それだけで私は信じられないくらいに幸せなのです」
「縣様…」
梨央は改めて縣を見つめた。
…昔から…ずっと梨央を護り、支えてくれる紳士…。
端正で男らしい顔立ち…背が高く、まるで西洋人のように逞しい体躯…知的で優雅で自信に満ちた立ち居振る舞い…身につけるものはいつも一級品で、そのお洒落な様は父、伯爵を彷彿させた。
…優しく、思いやりに満ちた態度は梨央をいつも安堵させ、まるで血の繋がらない兄のように慕っていた。
メイド達のお喋りから、縣がいかにハンサムで、社交界でも淑女の憧れの的であるかということは知っていた。
そんな非の打ち所のない青年貴族の縣が、なぜ自分のようなまだ幼い子供に尽くしてくれるのか…
梨央は理解できないでいた。
「…あの…縣様は、なぜ私に尽くしてくださるのですか?…その…もし縣様に恋人がいらしたら、私はご迷惑ではないのでしょうか?」
長年の疑問をおずおずと口にした梨央に、縣は眼を丸くして驚き、天を仰いだ。
「…何と言うことだ…神よ…!」
そして、力強く梨央の手を握りしめると歩き出した。
「こちらにいらして下さい」

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