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月の川 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第5章 Fly me to the Moon

梨央が縣に手を引かれて行ったのは、庭の中央に建てられたガラス張りのドーム型の洒落た温室であった。
広々とした中は、暑くもなく寒くもない丁度良い温度に設定されていた。
夏だと言うのに色とりどりの様々な花が咲き乱れ、円形の中にはお茶や読書が楽しめるようにゆったりしたソファやテーブルセットが配置よく置かれている。
美しい花々や緑豊かな木々を眺めながら寛げるような温室であった。
まるで欧州のグリーンハウスのような造りに、梨央は眼を見張る。
「…まあ、なんて素晴らしい温室…」
「北白川家の温室には遠く及びませんが」
縣は控えめに笑う。
梨央は首を振る。
「いいえ、みたこともないような美しい温室ですわ。…しかも珍しい花がたくさん…!なんて綺麗なんでしょう!」
「標高が高いところでしか咲かない高山植物も植えてあります。…欧州から庭師を呼んで、苗から全て選んでもらい作ったのです。」
北白川家の温室ほどの規模や広さはないが、世間知らずな梨央でもこの温室がどれほど贅の限りを尽くしたものか、一目で見て取れた。
嬉しそうに、貴重な花々を見て回る梨央に、縣は呟くように言った。
「…良かった。…ようやく笑ってくださった…」
その言葉に、梨央は振り向いた。
縣がほっとしたような安堵の表情を浮かべて、梨央を眩しそうに見ている。
梨央の心に申し訳なさが広がる。
「…申し訳ありません…私が、外泊くらいで動揺したから…縣様にお気を遣わせてしまって…」
俯く梨央に、縣は慌てて首を振る。
そして、遠慮勝ちに梨央に近づき、梨央の華奢で美しい手を取った。
「いいえ、梨央さん。私がもっと配慮すべきでした。…梨央さんは他の女性とは違う。…貴女は俗世間から隔絶され、純粋培養に育てられた方なのですから…」
「…縣様…」
「ご覧ください。この温室は天井もガラス張りになっていて、星空が眺められるようになっているのです。天然のプラネタリウムです」
縣に促され、天井を見上げる。
「まあ!…なんて綺麗!」
標高が高いせいか、星が手を伸ばせば届きそうなくらい近くで輝いている。
その美しさに梨央は暫し、言葉を失った。
「…梨央さんの為にこの温室を作ったのです」
梨央は驚いて、縣を振り仰ぐ。
縣の端正だが情熱的な眼差しが梨央を怖いほど見つめていた。
「…なぜ…そこまでして下さるのですか?」
縣を見つめ返しながら梨央は尋ねた。
広々とした中は、暑くもなく寒くもない丁度良い温度に設定されていた。
夏だと言うのに色とりどりの様々な花が咲き乱れ、円形の中にはお茶や読書が楽しめるようにゆったりしたソファやテーブルセットが配置よく置かれている。
美しい花々や緑豊かな木々を眺めながら寛げるような温室であった。
まるで欧州のグリーンハウスのような造りに、梨央は眼を見張る。
「…まあ、なんて素晴らしい温室…」
「北白川家の温室には遠く及びませんが」
縣は控えめに笑う。
梨央は首を振る。
「いいえ、みたこともないような美しい温室ですわ。…しかも珍しい花がたくさん…!なんて綺麗なんでしょう!」
「標高が高いところでしか咲かない高山植物も植えてあります。…欧州から庭師を呼んで、苗から全て選んでもらい作ったのです。」
北白川家の温室ほどの規模や広さはないが、世間知らずな梨央でもこの温室がどれほど贅の限りを尽くしたものか、一目で見て取れた。
嬉しそうに、貴重な花々を見て回る梨央に、縣は呟くように言った。
「…良かった。…ようやく笑ってくださった…」
その言葉に、梨央は振り向いた。
縣がほっとしたような安堵の表情を浮かべて、梨央を眩しそうに見ている。
梨央の心に申し訳なさが広がる。
「…申し訳ありません…私が、外泊くらいで動揺したから…縣様にお気を遣わせてしまって…」
俯く梨央に、縣は慌てて首を振る。
そして、遠慮勝ちに梨央に近づき、梨央の華奢で美しい手を取った。
「いいえ、梨央さん。私がもっと配慮すべきでした。…梨央さんは他の女性とは違う。…貴女は俗世間から隔絶され、純粋培養に育てられた方なのですから…」
「…縣様…」
「ご覧ください。この温室は天井もガラス張りになっていて、星空が眺められるようになっているのです。天然のプラネタリウムです」
縣に促され、天井を見上げる。
「まあ!…なんて綺麗!」
標高が高いせいか、星が手を伸ばせば届きそうなくらい近くで輝いている。
その美しさに梨央は暫し、言葉を失った。
「…梨央さんの為にこの温室を作ったのです」
梨央は驚いて、縣を振り仰ぐ。
縣の端正だが情熱的な眼差しが梨央を怖いほど見つめていた。
「…なぜ…そこまでして下さるのですか?」
縣を見つめ返しながら梨央は尋ねた。

