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第5章 Fly me to the Moon

縣は山荘の樫の木に落ちた雷のすさまじい音に目を覚ました。
…嵐か…。
季節外れの台風が発生したのかもしれないな…。
豪雨と暴風が山荘を取り巻いているようだ。
ガタガタと窓硝子が揺れる様が激しく見て取れる。
…梨央さんは…
怖がっていらっしゃるかも知れない…。

…お嬢様は雷が大の苦手で。
先日の雷騒ぎの時は大変でしたわ。
お嬢様の目の前で雷が落ちたものですから…お気を失われてしまって…。
お気を取り戻してからも、酷く取り乱されて…落ち着かれるまでかなりの時間がかかりましたの。

以前、梨央の乳母のますみに聞いたことを思い出し、縣ははっと飛び起きた。
梨央さん！
縣は素早く夜着の上にガウンを羽織ると、ランプを手に足早に部屋を出る。
そして、一目散に東翼の梨央の部屋へと向った。